マー君に学ぶ、復活のための「解決志向」 無意味なイライラを断ち、窮地を抜け出す

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「右ひじ靭帯部分断裂」というショッキングな傷病名が発表されたとき、田中投手は次のようなコメントを出していました。

「このような形でチームを離れることになり、チームメート、そしてファンの皆様には大変申し訳なく思っております。球団からの発表の通り、これから数週間のリハビリに入りますが、これも長い野球人生の一部であると受け止めています。選手としてプレーする以上、故障するリスクは常にあります。そういったときに大事なのは、しっかりと自分の身体と向き合い、一日でも早く復帰できるように努めることだと思います。皆様に元気な姿を見せられるよう頑張ります」(全文)

 

このコメントからは、前投稿にも記載した、アンガーマネジメントの根幹となるソリューション・フォーカス・アプローチ(未来志向、解決志向)が感じられます。

未来志向、解決志向の反対は、問題思考、原因志向といったように過去に目を向けることです。田中投手がケガを負った直後は、高校時代の炎天下での連投や日本シリーズの多投、さらにはアメリカのボールの滑りや縫い目の低さによる握力負担からの肘への影響など、今回の故障を引き起こした原因を追求するような論調が目立ちました。

もちろん、「再発防止」という意味では、問題思考も重要です。しかし、今のケガを治すという事象を最優先するならば、過去のことを憂いたり、怒ったりしたところで、何の解決にもつながりません。そうであれば、「どうすれば右肘が早く元に戻るのか」ということに特化した未来志向で対処したほうが賢明であり、得策でしょう。

「イライラ」で傷の治りが遅くなる?

実際、感情コントロールがうまくできないことが、傷の回復を遅らせてしまうというケースもあります。ある実験の例を見てみましょう。

この実験は、8人の腕に吸引器を使って試験的に直径8ミリメートル程度の水ぶくれを作り、その治り具合を8日間観察するというものです。8人には事前に心理状態の評価を行う質問票に記入してもらい、普段「怒り」をどの程度コントロールできているかの調査も実施。これらをかけ合わせて傷の治り具合を観察していくと、怒りを上手にコントロールできない人ほど傷の治りが遅い、ということがわかったそうです。

怒りをコントロールできていないグル―プでは、ストレスホルモンといわれるコルチゾールの活性が比較的高かったとのことで、これが傷の治りを遅くすることと関連しているのかもしれません。逆に田中投手の場合は、大きなプレッシャーのかかる中、冷静に現実を受け入れ上手にストレスをコントロールできたことが、早期の回復に寄与したのではないでしょうか。

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