ビール業界を襲う“三重苦”、猛暑効果も吹き飛ばす大逆風

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 すると今春、サッポロビールが先陣を切って第3のビール「ドラフトワン」の出荷価格を値下げ。6月あたりから価格競争は一段と加速して、製品によってはコンビニ価格と20円以上の差がついている。「そもそも第3のビールを選ぶのは、価格志向の強いユーザー。低価格競争の起きやすい土壌があった」(ゴールドマンサックス証券の田中克典アナリスト)。

手ごわいライバルも現れた。韓国メーカーなどが製造するプライベート・ブランド(PB)が、徐々に存在感を増しているのだ。

以前から一部量販店で売られていたが、今年6月末にイオンが「88円ビール」を投入。西友もPBビールを発売するなど、流通大手にも広がりつつある。ビールは嗜好性が高く、PBは難しいと言われてきたが「発売から6週間で2000万本を売り、その後も順調に拡大している」(イオン)。

メーカーにとって頭が痛いのは、1缶約50円もある価格差だ。ビール各社は過去に行き過ぎた価格競争を国税庁に指導されたこともあり、販促費の支出や、量販店での特売回数などを制限する自主規制を導入している。

つまり安易に値下げできない状況にあり、価格で対抗するのは難しい。現状、ビール類でのPBシェアは3%程度とされるが、今後の動向次第ではさらに勢いを増しかねない。

止まらないビール離れ

ビール以外のライバルも台頭してきた。筆頭格はハイボール。昨年来、サントリーを中心に販促強化を進めたところ需要が急拡大。勢いは止まらず、サントリーが7月に主力の「角瓶」など8品目の出荷調整を決めたほどだ。ノンアルコールビールも昨年5月発売の「キリンフリー」が大ヒットとなって以来、各社が参入。今年の出荷数量推計は900万ケースと見過ごせない量に膨らんでいる。

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