中央三井トラストHLDと住友信託銀行が統合最終合意、メガバンク系にない独自色は出せるか

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 一方、中央三井トラストHLDの田辺和夫社長(写真左)に対しては、残る公的資金2000億円の返済に関連する質問が相次いだ。同社の筆頭株主は約30%の普通株式(09年8月に優先株から一斉転換)を保有する整理回収機構(機構)。すでに返済原資は十分確保しているものの、機構の保有株簿価が400円と時価(25日時点で301円)を上回っており、国(機構)が含み損を抱えた状態だ。「なるべく早く返済していく」(田辺社長)方針とはいえ、時価が簿価を上回ってこなければ返済の折衝も難しい状態だ。
  
 昨年の経営統合発表後、同社の株価は一時300円台後半まで上昇したが、相場全体の低迷も影響し、現在は統合発表前の株価水準に戻った。今後も「業績を上げていく」(田辺社長)ことで、株価400円の到達を目指すほかない。来年の経営統合までに完済が実現しなければ、機構は三井住友HLDの株式12%を保有する筆頭株主となる。
 
 メガバンク傘下の信託銀行(三菱UFJ信託銀行、みずほ信託)との違いについて、「メガバンク系信託銀行はメガさんが持つお客さんと連携している。われわれは懐の深いお客さんを直接持っており、ニーズを聞き取る力やサービス創造の速さで独立系としての差別化を図れるのではないか」(常陰社長)と語った。

とはいえ、メガ系信託も自前の顧客を持つ点では同じ。加えてグループの顧客基盤を活用してビジネスの拡大を図っており、各業務分野でのぶつかり合いは続く。

「信託グループとしての価値拡大を目指していく」と会見を締め括った常陰社長。中央三井が抱える公的資金返済という課題を長引かせないためにも、統合後、いかに早く目に見える形でシナジーを発揮できるかが問われるところ。数値目標は「5年後」に設定したが、企業価値向上の具体的な成果を”前倒し”で示していく必要がありそうだ。

(井下 健悟 =東洋経済オンライン)

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