日本の夫は「18時退社夫」に変われるか? 昭和的な専業主婦家庭からの”進化”

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会社側も、「時間だけではない価値創造」を追求

こうした工夫は、ワーキングマザーにも通じるところがある。特に裁量権のある仕事に就く母親たちは、子どもを保育園や学童保育に迎えに行ける時間帯にいったん退社し、帰宅後も随時メールをチェックしたり、子どもが寝た後、再度仕事に取りかかることが多い。

実は吉原さんの部署にも、最近、ワーキングマザーが増え始めた。数年前までは、女性は結婚退職が暗黙の前提の職場だったが、時代は変わってきている。

「たとえば営業業務課という部署は、もともと事務的な仕事が中心ですが、そこで働くワーキングマザーのひとりは、事務の枠を超えて営業的な仕事にも就いてもらっています。『時間だけではない部分で価値を発揮してもらいやすくできないか?』という課題に取り組んでいます」

会社にはちょうどこの4月に女性活躍推進室ができ、男性もこうした課題に主体的にかかわるべき――という認識は広まりつつある。社長自身の発案で、ワーキングマザーも含めた女性社員との懇親会も企画されているという。

仕事の成果を落とさず、自らお手本を示しながら社内の雰囲気を変えていく。片働きで家族4人の生活を支えながら、夜は家事も担う。最大限努力している理想的なお父さんに見える吉原さん。夫婦げんかなんて、しませんよね、と尋ねてみたら……。

「夫婦で接する時間が増えると衝突も増えます。たとえば今回、私がこういう記事に登場すると、家庭を大事にしているように見えますよね。妻に言わせれば突っ込みどころはたくさんあるはず。『やり方が雑』とか『掃除はあまりしない』とか。一方で私からすると『早く帰るのは大変なんだよ』と言い分はあるわけで……」

それはけんかというより、意見のすり合わせではないでしょうか。重ねて聞くと「確かにそうですね。どちらかが我慢するより、思っていることを言ったほうがいいと思うので、お互い、何でも口に出して言うようにしています」。

夫婦のコミュニケーションがしっかり取られていて、お母さん、お父さんそれぞれが家事や育児や仕事を頑張っていることは、子どもにも伝わるようだ。ある日、幼稚園年長の長女が吉原さんにこう言った。

「私たち、もう自分で寝られるから、お父さん無理して帰って来なくていいよ。だってお父さんが社長に怒られたら、かわいそうだからさ」

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