「日本の劣化」、安倍政権が加速させている 笠井潔×白井聡、『日本劣化論』延長戦(前編)

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白井 聡(シライ・サトシ)●1977年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。現在、文化学園大学助教。専門は政治学・社会思想。『未完のレーニン』(講談社選書メチエ)『「物質」の蜂起をめざして』(作品社)『永続敗戦論』(太田出版)がある。

白井:だから、2020年東京オリンピックというと、1964年のものより、1940年の幻に終わった東京オリッピックを連想してしまう。2020年と1940年はキリがよく、ちょうど間は80年です。その半分は1980年にあたり、この年にモスクワオリンピックがありました。モスクワオリンピックはケチがついたことで有名です。ソ連のアフガン侵攻に抗議して、アメリカや日本などがボイコットして抗議した。そういうオリンピックをやったソ連は約10年後に国家として滅亡します。

1940年の場合、その5年後に大日本帝国は滅亡しました。なんとも不吉な符号な気がします。2020年のオリンピックがなんとか開催できたならば、あと10年はもつ。開催できないところまで追い込まれたら、あと5年ぐらいしか持たないのではないかと。劣化が行き着く先に体制の崩壊まで想像してしまいます。

笠井:ちゃんと崩壊すれば、新たな出発点になりうるわけですが、ほとんど崩壊しながら形だけ残っているのが憂慮すべき状況でしょうね。

白井:前に宮台真司さんと話した際に、宮台さんが「社会というのはどんなに腐敗したとしても、それなりに存続してしまうのである」とおっしゃていました。木端微塵になれば作り直すしかないのですが、腐敗したままだらだら死にながら生きていってしまうわけです。

何のための内閣改造なのか

白井:それでは、この本を出して以降、いくつか劣化の兆候があるので、それを検討してみたいと思います。

まず、先日安倍内閣が改造されました。改造した理由は、あくまでポストの割り振りにしか過ぎません。人事をやるとき、どんなにがんばっても、心遣いしても、なんで私は大臣になれないのだといって腹を立てる人がいます。

政策の継続性でいえば、そんな大臣をころころ変えていいはずないわけです。今回の安倍内閣にしても成立したのが2012年12月のはずなので、1年半しかたっていません。それでなにができるか。もちろんなにもできない。だから内閣改造なんてやるべきではないのに、人事のために内閣を改造する。これって大臣なんて誰がやっても同じということですよね。だったら150人ぐらい大臣を増やせばよい気もしますよ(笑)。

特に、今回目玉と言われているのが女性閣僚です。高市早苗氏、山谷えりこ氏など、えりすぐりの方々が閣僚になられました。笠井さんこれをみてどう感じましたか?

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