「大銀行のトップ」になるのだけは勘弁 松本大 マネックス証券代表取締役社長CEOの好き嫌い(下)

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松本:メガバンクの頭取とか(笑)。

楠木:アクセル踏まないでクリープしているだけだろ、みたいな(笑)。

松本:いや、あれはアイドリングですよ。

楠木:そういう人は「俺が踏んだらすげえぜ」と言っていますね。でも、本当に踏んだら危ないことになる……。

松本:踏んでみろよ。踏んでくれよ。見せてくれと(笑)。

自分の衰えを認識する

楠木:でも、高回転ですと、どんなにオイルを注いでもいつかは切れてしまいますが、引退は意識されていますか。

松本:引退ではありませんが、自分は衰えてきているという事実をつねに認識しています。僕は1963年生まれ、63年式の車なのです。63年式のコルベット・スティングレーは超カッコいい。今でも走るし、味もあるけれど、63年式です。性能で2012年式の車に勝てるわけがない。だから、自分は63年式だという事実は、絶対、忘れてはいけないと思っています。自分は陳腐化しているという自覚です。ビジネスの対象は「今」です。日本の人口全体の平均年齢はゆっくり上昇していく。自分は1歳年を取るごとに、ビジネスの対象である「今」の平均年齢からどんどん遠ざかっているのです。そのことを強烈に意識しています。還暦を迎えるときにはすっぱり辞めると言っています。

楠木:引退したら、高回転のための別の負荷が必要になるでしょうね。たとえば海辺の家で、モニターを4面ぐらい並べて個人投資家としてトレーディングするとか。駅前サウナでもかまいませんが。

松本:それはやはり海辺の家ですね。酒を飲みながら、肝臓一本勝負で高回転トレーディング!(笑)。

楠木:それは突飛なジジイですね。「おお、レッドゾーン入ってきた!」なんて言って飲んでいたり(笑)。

松本:海辺の家で、酒をガバガバと飲みながら、思う存分トレーディングをしたい。世界中のどこの法律にも、個人投資家が飲酒してトレーディングしてはいけないとは書いてありませんからね(笑)。

取材日:2012年2月9日、構成:青木由美子、撮影:梅谷秀司

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楠木 建 一橋ビジネススクール特任教授

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くすのき けん / Ken Kusunoki

1964年東京都生まれ。1992年一橋大学大学院商学研究科博士課程修了。一橋大学商学部助教授および同イノベーション研究センター助教授などを経て、2010年より一橋ビジネススクール教授。2023年から現職。専攻は競争戦略とイノベーション。著書に『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)、『絶対悲観主義』(講談社+α新書)のほか、近著に『経営読書記録(表・裏)』(日本経済新聞出版)などがある。

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