日本の税をどう見直すか 土居丈朗編 ~「抜本改革待ったなし」を丁寧に一体的に論述

拡大
縮小


 それでは、消費税増税の際の低所得者対策をどうするか。税と社会保険料の負担を一体的に調整し、給付付き税額控除によって、支援が必要な人に手を差し伸べるべきだと論じる。一方、所得税の最高税率については引き上げるべきではないという。日本の所得税の問題は、税率が高いにもかかわらず、税収が少ないことである。これは、所得控除の多いことが原因で、その縮小で課税ベースを拡大することが肝要という。評者も最高税率引き上げは、租税回避行動を促すだけに終わり、デメリットのほうが大きいと考える。

大きな税制の矛盾を放置することで、国民経済の基盤が日に日に侵食されている。いつまでも不安定な政治情勢を改革先送りの言い訳にすることはできない。むしろ「ねじれ国会」であることを、超党派での改革推進の好機として欲しい。Check

どい・たけろう
慶応義塾大学経済学部教授。1970年生まれ。大阪大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。慶応義塾大学講師などを経、審議会委員等の役職を多数歴任。著書に『地方債改革の経済学』『アリとキリギリスの日本経済入門』など。

日本経済新聞出版社 2520円 233ページ

  

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