国産旅客機「MRJ」は地方の観光業を救うか 三菱商事などが運航受託会社を設立検討

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たとえば、路線開設を希望する地方の自治体・地元経済界が協力して航空券の販売会社を作り、アジアと地元を結ぶ路線を開設。実際の運航業務は運航受託会社に委託する、といった形が考えられる。

「たとえ運賃だけではペイしなくとも、観光客が増えることで、地域内の消費や雇用、税収にも波及効果がある。そうした面も含めて総合的に考えれば、採算が合う路線も出てくるはず」(佐髙専務理事)

実現には規制緩和が不可欠

運航受託会社は地方の観光にプラスとなるか(撮影:尾形文繁)

ただし、こうした構想が実現するには、採算性以外の点でも多くの課題がある。その1つが規制だ。

たとえば、日本の航空法では、運航業務の実績のない企業が第三者に運航委託することは禁じられている。現在の規制のままでは、自治体・企業が運航受託会社を活用することは事実上不可能だ。

また、受け皿となる運航受託会社には、操縦士や整備士、運航管理者、客室乗務員など多くの人材が必要となる。こうした人材をそろえ、実際に運航業務を受託できるだけの体制を整備するには、長い準備期間が必要になる。現実的には、人材が豊富な大手航空会社の協力なしには難しいだろう。

「構想の実現に向けては、さまざまな環境整備と課題解決が必要になる。エアラインや地方の方々、当局とこれから各方面で議論を深めていきたい」と佐髙専務理事。はたして、既存の大手航空会社、LCC(格安航空会社)とも違った、新たなビジネスモデルが日本の航空業界で誕生するのかどうか。まずは地方がどれほどの関心を示すかが大きなポイントとなりそうだ。

渡辺 清治 東洋経済 記者
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