「OK牧場の決闘」の決意なら、国民巻き込む政策勝負の決闘を

「OK牧場の決闘」の決意なら、国民巻き込む政策勝負の決闘を

塩田潮

 民主党代表選の告示日の9月1日まで残り1週間余、最大の注目点は小沢前幹事長(O)と菅首相(K)が直接対決する「OK牧場の決闘」となるかどうかだ。
 出処進退に関する小沢氏の決断の仕方、発想、行動を20年以上ウォッチしてきて、今回は最終的に出馬見送りに落ち着くのではと先週末までは予想していたが、ここへきて本気ではないかという気配も出てきた。過去のパターンでは推し量れない覚悟と意気込みが読み取れるからだ。

 見送り説の根拠は、(1)菅首相によって葬られた挙党体制と昨年夏のマニフェストの復活を望む小沢氏は、菅首相側に圧力をかけ、譲歩を引き出すのが最大の狙いで、「譲歩しないなら決闘」という構えでチキンレースを仕掛ける作戦、(2)慎重で緻密な小沢氏は絶対に勝てると確信が持てる戦いしかしないタイプ。「辞める」「降りる」の判断は、どちらかといえば即断型だが、「出る」「なる」の選択は逡巡型で、今回もそのクセが出る、(3)ここで出馬して、もし敗北すれば政治生命の危機に直面しかねない、(4)菅政権が早期に行き詰まる可能性があり、出番を待つのが得策との判断がある、といった点などだった。

 だが、「生涯最大の決心」ということなら、過去の例は参考にならない。
 代表として3年間、政権交代のレールを用意したのに菅首相によってほぼ全否定された、政権交代の成果を実現しなければ日本の民主主義が死滅する、「脱小沢」の名の下に「政治的な死」を迫られる現状を打破しなければ、といった小沢氏流の危機感が沸点に達すれば、「決闘」に向かうだろう。
 とはいえ、「首相への挑戦」となれば、四十数年の政治人生の集大成となるはずなのに、いまだ「小沢政治の決定版」といえるような明確な政権プランも打ち出されていない。ぎりぎりまで「決闘」の雰囲気と情勢を演出してチキンレースを制する戦略では、という疑念は最後まで消えない。

 本気で「OK牧場の決闘」という決意なら、党内向けの銃撃戦ではなく、国民を巻き込む政策勝負の決闘に持ち込むべきである。
(写真:尾形文繁)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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