「ビッグデータ」って、やっぱりすごそうだ 『データの見えざる手』を読む

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オーム解析、なんとか出されたデータを解釈することはできるけれど、データの解析自体、私にはまったく手に負えない。正直に告白いたしますと、生命科学研究におけるこのような解析、バイオインフォマティクス、のことはようわからんと研究してますねん。すんません。メカニズムのわからないブラックボックスをとおして綺麗に磨き上げられた宝物を見るようなものであるから、隔靴掻痒の感は否めない。

 時代なので、そういったデータを出し、いや若い人に出してもらい、論文にすることがあるし、もちろん他の研究室からのデータも見る。しかし、どうしても基本的なところを理解できていないので、完全に信じることができない。もともと疑い深いし…。それなら勉強しろよ、と言われそうではございますが、もう定年まで10年を切っておりますし、そこまでようせんわ、という状況なのでございます。すんません。

ここまでが、長い前置きである。何がいいたいかというと、自分が関わっている生命科学研究で感じているのと同じような印象を、ビッグデータ全般に対して持っているということなのだ。ひとことでいうと、常に、ちょっとした胡散臭さと騙された感を抱いているのである。私が勝手なせいかもしれないが、自分に都合のいい結果に対しては、さすがビッグデータ、と思えるのであるが、逆に、都合の悪い結果は、ちょっと怪しいんとちゃうかと思ってしまう。

熱力学と人間行動の意外な関係

ようやく、本の紹介。ウェアラブルセンサーで個人の活動を計測し、そのビッグデータをコンピュータで解析するという内容だ。そんなもんで何がわかるんや、と思われるかもしれない。計測したところで、もちろん1日や2日ではばらつきが出る。が、1年も計測すると、その人固有のパターンが出てくるのである。

ライフタペストリ(4人の1年分)。活発な動きを赤で示し、静止状態で青を示す

かなり規則正しい私などの場合はきれいなパターンがでるはずだ。5時半ころ動き出して、6時25分きっかりから10分間、けっこうな運動になるテレビ体操のお時間。12時と1時の間には、2~30分じっとしているお昼寝の時間。というように。

もちろん、各個人では異なっているが、多人数のデータ解析をすると、一定の法則が見えてくるというのだ。まぁ、さもありなんという気はする。が、執筆活動の限界を算定する数式があって、それで計算したら、1日の活動時間のうち約29%が原稿執筆に割ける時間の限界だ、と言われても。そんなもん、ほっといてくれよと言いたくなる。

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