米国のイラン制裁強化法、金融取引まで制裁の対象に、原油輸入が止まる事態も

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 米国のイラン制裁強化法には、大統領の判断による免除規定があるうえ、「制裁強化法は伝家の宝刀というべきもので、実際に抜く可能性は低いのではないか」(関係者)という見方もあるが、米国が強硬路線に転換したことは間違いない。

国連以上EU未満の制裁か

それでは、日本はどう対応するのか。米国の要請に対応し、EUの制裁を横目で見ながら、それより穏健な方向で、国連安保理決議第1929号にプラスした独自制裁を秋口に実施することが予想される。

日米同盟を堅持するという立場の日本だが、イランとの関係は良好であり、イラン指導者の子弟が日本に留学するなど、両国の交流は活発である。日本の原油輸入先としてはサウジアラビア、UAEに次いで3位。原油輸入量の約12%を占める重要なエネルギー供給国だ。日本には苦い経験がある。06年に米国の圧力もあり、アザデガン油田権益の65%を放棄したが、その分を中国が09年にそっくり獲得した経緯がある。

仮にイラン原油の輸入停止という制裁を日本が実施しても、その原油を「爆食」中国が購入すれば、実効性が薄れる。米国とイランの狭間で、日本は困難な立場に立たされている。

(シニアライター:内田通夫 =週刊東洋経済2010年8月14日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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