産業リサーチ(造船) 日韓二強のなか利益なき繁忙、再編で回復目指す

造船業界は2003年も引き続き日・韓の建造量世界一争いが続く。これまでの建造量を見ると、2000年は韓国が日本を抜いて初めて世界一になったが、翌2001年は日本が再び抜き返した。2002年も日本が世界一だったが、今年は韓国が年明けから猛烈な受注活動をしており、「世界一に返り咲きそうだ」(日本造船工業会)。現在、造船受注は引き続き高水準を維持している。理由はイラク戦争やSARS問題といった一時的なマイナスはあったものの、米国、アジア、中国の景気が引き続き回復傾向にあること。さらに、海洋汚染を防止する環境対策から、タンカーのダブルハル化の規制が強まっていること。しかも、最近ではこうした規制がバルクキャリアにも及んできたこともプラスに働いている。また、最近の世界的な低金利を背景として、船主によるやや投機的な発注も増加してきている。ただし、引き続き韓国の製造設備の過剰感が強く、船価は低水準で推移している。
 造船業界において韓国の存在が急速に高まってきたのは1990年代の後半。韓国政府が総合機械産業である造船業界を、半導体同様の外貨獲得産業に位置づけたことによる。その結果、現代重工中心に大型ドックの建造が相次ぎ、積極受注を開始した。
 その影響は、世界の造船建造量にも現れている。1900年以降の世界の造船建造量には2つの大きな山がある。
 1つは第1次オイルショック直後の1975年で、この時の建造量は過去最高の3420万総�だった。もう一つが2000年で、3619万総�で、直近の2000年は日韓の激しい受注競争が影響している。
 折しも1997年には、アジア経済危機に連動した韓国経済の悪化から、ウォンが急落。このウォン安を背景に、韓国の輸出競争力は一段と強化された。その後、ウォンは値上がりしたものの、依然、円に対しては相対的なウォン安を指摘する業界関係者は少なくない。その結果、受注船価の低落が常態化し、日本の造船業界は利益なき繁忙に陥っている。
 加えて、造船大手各社にとっては、2002年に建造量で国内トップになった今治造船など中堅専業造船メーカーの追い上げも激しくなっている。このため、昨年以来、造船大手各社は本格的な事業再編に乗り出している。
 2000年9月の石川島播磨重工(以下石播)、川崎重工、三井造船による業務提携はその最初のものだったが、2002年10月には日立造船とNKKの造船部門が統合しユニバーサル造船が誕生した。また、造船部門の本体からの分離も盛んだ。例えば、川崎重工は2002年10月に「川崎造船」、石川島播磨は2002年10月に「IHIマリンユナイテッド」、住友重機械は4月に「住友重機械マリンエンジニアリング」としてそれぞれ本体から分離した。こうした分離の狙いはコスト削減だけでなく、今後の提携や合併などにも機動的に対応するためだ。
 日本造船工業会調べによる今後の建造量予想では、向こう一五年間で平均2750万総�と、ほぼ横ばいで推移するとみられる。ただ、韓国に続いて今後は中国の市場参入も想定される。このため、大手各社は研究開発費を拡大し、LNG船や豪華客船など高付加価値船の比重を高めて行く方針だ。
【日暮良一記者】

(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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