トヨタの“苦しい”内実、業績予想の上方修正でも喜べない理由

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足元では米欧での苦戦と円高がダブルパンチだ。米国でGMとの合弁、「NUMMI」を閉鎖した分などは国内からの輸出に切り換えている。今期は320万台の国内生産のうち180万台が輸出される計画で、前期51%だった輸出比率は56%に上昇。円高リスクは拡大の懸念がある。

国内生産も計画線を維持できるかは微妙だ。政府によるエコカー補助金が打ち切られる10月以降、需要の反動減が確実視されている。現状で1万4000台近いトヨタの1日当たり生産は、10月には1万2000台を割る見通しだ。これは多くの部品メーカーにとって、損益分岐点を下回る水準とされる。

トヨタ自身、4~6月期でも国内は275億円の営業赤字。為替の前提は1ドル90円で、80円台の円高が定着すれば、さらなる重圧にさらされる。いまやトヨタの利益を牽引するのは、アジアや中南米など新興国での稼ぎだ。国内での生産体制見直し、新興国の一層の強化が、待ったなしの課題となってきた。

■トヨタ自動車の業績予想、会社概要はこちら

(撮影:今 祥雄 =週刊東洋経済2010年8月14・21日合併特大号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

西村 豪太 東洋経済 コラムニスト

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にしむら ごうた / Gota Nishimura

1992年に東洋経済新報社入社。2016年10月から2018年末まで、また2020年10月から2022年3月の二度にわたり『週刊東洋経済』編集長。現在は同社コラムニスト。2004年から2005年まで北京で中国社会科学院日本研究所客員研究員。著書に『米中経済戦争』(東洋経済新報社)。

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