若者は、なぜ「無業状態」に陥ってしまうのか 城繁幸と西田亮介、「若者と仕事」を語る(前編)

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西田:それから「たとえ無業状態に陥ったとしても、携帯電話を持っている人は、無業期間が短い」というデータもあります。つまりこれは、仕事を得るためには「誰かとコミュニケーションを取る」ことが非常に大きな要素になりうると言えます。誰かに相談したり、助けを求めたり、もっと直接的には就職活動の電話をかける相手がいる人ということですね。

学校を中退していたり、学歴が高くてもゼミに入っていなかったりする人は、言い換えれば、「人と接触する機会」を失ってきているわけです。それがある閾値を超えてしまった人は無業状態から抜け出しにくくなっているというわけですね。人間関係、社会関係の形成と、就職活動を、並行して支援していくことの重要さが示唆されます。

:その「資格取得には意味がない」という話と、「コミュニケーションを取ることこそ大事」という話は、失業問題でも同じことが言えますね。よく「どういう資格を取っていれば、職に困らなくなりますか」と聞かれるんです。でも企業の人事担当者の視点から言えば、資格所持者に対する特別なニーズはありません。つまり「この資格を持っていれば採用してもらえる」なんて資格はない。もちろん、持っていないよりは持っていた方がいい場面も多いと思います。

でも基本的に日本企業は、「仕事はOJTで教える」「資格がどうしても必要になれば、会社のおカネで取りにいかせる」というスタンスです。だから、資格よりもコミュニケーション能力が重視される。そしてコミュニケーション能力というのは、組織の中にいることで磨かれていくものですから、とりあえず組織の中で働いた経験を重く見られるんですね。

ブラックでもなんでも、20代は実務経験を積むべし

おおげさな話でもなんでもなく、税理士でも、公認会計士でも、弁護士でも、その資格を持っているけれども28歳で職歴がない人と、まったく聞いたことのない中小企業でも実務経験のある28歳なら、人事は99%後者を採用したいと思うものなんです。

だから、反対に採用される側から考えれば、もし仕事を得たいのであれば、「組織に入ってキャリアを積む」ことが何より大事なんです。とにかく20代のうちに会社の中でキャリアを積む。別に有名企業である必要はありません。暴力団や犯罪行為をしている会社は別ですが、今世の中で問題とされているような、いわゆる"ブラック企業"と呼ばれている企業でも、私はいいと思いますよ。そもそもブラック企業を取り締まるはずの厚生労働省にしたところで、キャリア官僚は月に200時間残業をしている超、"ブラック企業"です。

結局、いわゆる"ブラック企業"と言われて叩かれているサービス業系の企業と、若手をバリバリ働かせる大企業のどこが違うかというと、大企業は35歳くらいになるとやや仕事の量が落ち着いてきて、40歳を過ぎるとふんぞり返る立場になる。一方で賃金は上がって、ポストや役職もつく。でもサービス業系の場合には、ずっと過酷な労働状態が続く。それだけのことです。

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