原発停止だけじゃない、電気料金上昇の真相 震災前に比べて4割近くも値上がり

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原発停止との関係が深いのは、料金改定値上げだ。東電の場合、原発の発電収入がなくなった反面、原発の代替となる火力発電の燃料費が大幅に増加。燃料単価の上昇は燃調で料金へ反映されるが、使用量の増加による燃料費増大は料金に反映されない。

燃料費は原価全体の4割強を占めるだけに業績は急悪化。そのため、人件費削減など合理化を前提に値上げを政府に申請し、平均8.46%(モデル家庭は5.1%)の値上げが認められた。

料金改定の影響は小

ただ、震災後の値上げ幅のうち、料金改定による影響は2割にも満たない。値上げ要因の大半は燃調を通じた燃料単価高、円安といえる。

東電は料金改定による来年以降の再値上げの可能性も示唆している。前回の値上げ時に、今年7月からの柏崎刈羽原発の再稼働を前提に置いていたが、今もそのメドが立たないためだ。現在、合理化の加速による値上げ回避を模索しているが、なお不透明だ。

今後の見通しについて、富士通総研経済研究所の高橋洋主任研究員は、「燃料価格上昇や増税、再エネの賦課金増加などが値上がり要因となる反面、(2016年度からの)電力小売り完全自由化による競争が値下がり要因となりうる」と語る。

すでにエネットなどの新電力会社は、大手より割安な企業向け料金でシェアを拡大している。家庭分野が自由化されて競争がさらに激化すれば、大手電力への値下げ圧力も高まる可能性がある。

「週刊東洋経済」2014年9月20日号<9月15日発売>掲載の「価格を読む」を転載)

中村 稔 東洋経済 編集委員
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