フィリップス、ノンフライヤーで「日本仕様」 爆発的ヒットで日本の調理家電に足場築く

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実はフィリップス、かつてはコーヒーメーカーなどを日本で展開していたが、09年に日本の調理家電市場から撤退している。価格競争が厳しく、利益が取れなかったためだ。

調理家電で再進出を果たす13年までの間は、シェーバーや電動歯ブラシなど日本である程度の足場を築き、利幅のとれる商品に注力していた。しかし、日本の調理家電市場もまだ伸びが見込めると考え、再参入が可能な競争力のある商品はないか、検討していた。そこで選ばれたのが、世界で売れ行きが好調だった「ノンフライヤー」だった。

「ノンフライヤー」という名前も日本仕様

ニーズを入念に調査した結果、日本人の65%が週2回揚げ物を食べるが、健康志向であるということが分かった。製品自体は世界で販売されているものと同じものだが、販売戦略をたてるうえでは日本市場の研究を十分に行った。

その結果、変更されたのが名前だ。海外では「エアフライヤー」という名前で販売され、揚げ物だけでなくパンなどもできると宣伝している。だが、健康志向の日本人向けには「油で揚げない」という点を強調するため、「ノンフライヤー」と命名した。オランダ本社からは「ノンフライヤー」の後に名詞を付けないと英語としておかしい、とクレームがついたという。「世界で売られている製品について名前を変えることは通常ではありえないことだった」と同社ブランドコミュニケーション部の土屋美寿々さん。

だが、油を使わないことが端的にわかる商品名にこだわった結果、日本人の心をつかみ、「ノンフライヤー」は日本の消費者に受け入れられた。ネーミングのわかりやすさが功を奏したのか、当初あまり想定していなかった高齢者の購入も多いという。

フィリップスでは、日本の調理家電市場はまだ伸びが見込めるとみている。また、日本の消費者の目はとても厳しく、その声を開発に活かしていけるという。「ノンフライヤープラス」は時期や国など具体的には決まっていないが、世界の他の国への展開も検討している。

一度は日本の調理家電市場から撤退したフィリップス。調理家電での成功例はノンフライヤーのみで、対日本戦略は始まったばかりだ。
 

富田 頌子 東洋経済 記者

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とみた しょうこ / Shoko Tomita

銀行を経て2014年東洋経済新報社入社。電機・家電量販店業界の担当記者や『週刊東洋経済』編集部を経験した後、「東洋経済オンライン」編集部へ。

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