中国の独禁強化で被る自動車メーカーの損得 消費者重視を打ち出したかに見えるが…。

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2008年に独禁法を施行した中国は、11年ごろから価格独占に対する規制を急速に強めてきた。外資系だけでなく、国内企業や国営企業も対象としており、外資のみを狙っているとはいえない。自動車部品などのカルテルは、すでに日米欧でも処分を受けた事案であり、世界の流れにようやく中国が追いついてきた形だ。

とはいえ、車両や補修部品の調査に関しては、純粋な独禁政策に加え、中国当局による消費者へのアピールという意図が感じられる。

レクサス(トヨタ)や独ベンツ、BMWなどの高級車の中国での価格は、本国の2~3倍の水準。25%の関税や17%の増値税を考慮しても高すぎる、と現地メディアからの批判が多かった。本来、価格が高いだけでは、違法ではない。が、メーカーが販売店に最低価格の遵守などを強いる「再販価格維持」として、独禁法違反となる(日系自動車メーカーは「そうした行為はない」と主張)。

苦しくなるのは中国メーカー?

再販価格の維持行為があったかは別にして、中国市場で自動車メーカーによる流通への支配力が強いことは間違いない。というのも05年に定めた「自動車ブランド販売管理実施弁法」があるからだ。

同弁法は、メーカーによる販売価格の管理を容認することで、有象無象が集まる中国の自動車流通に秩序をもたらし、消費者を保護することが目的の一つだった。一方、独禁法はメーカーの流通支配を一定以上認めないことで、消費者保護を図るのが狙い。手段の相反する法律が並存していたが、近年では独禁政策強化の流れが鮮明になっていた。

メーカーにとっては、車両や補修部品の価格を引き下げれば、利益が減る。だが、外資系にとっては、必ずしもマイナスばかりではない。「外資メーカーが値下げすれば競争力はむしろ高まる。苦しくなるのは中国メーカーのほう」。そう指摘するのは、中国の自動車市場を研究している、現代文化研究所の呉保寧・上席主任研究員である。

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