車両も駅も中国流、「ラオス鉄道」開業直後の姿 「列車で東南アジアへ」欧州鉄道ファンも注目

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中国ラオス鉄道の開通に刺激を受けたのか、タイとつながる鉄道でもラオス側でタナレーン駅からビエンチャン市街地に向かって延伸が始まっている。近く、タイへ向かうためのビエンチャンの新駅も完成しそうな勢いだ。ただ、両鉄道同士の接続への意識は希薄なようで、「両駅間を移動するには、車で20〜30分かかる距離」(古賀さん)離れているという。

タイとつながるメーターゲージ鉄道のビエンチャン新駅(写真:古賀俊行)

貨物ターミナルは、既存のタナレーン駅の北側で建設が進んでおり、その近くに向かって中国ラオス鉄道の線路も延びてくる。古賀さんによると、「現状ではタイ側ノンカイからタナレーンまで貨物列車が1日4往復入って来ている。今後、貨物列車はタナレーンの貨物ターミナルで荷扱いをして折り返し、旅客列車はビエンチャンの新駅まで入ってくる事が想定される」と現地の状況を読み解く。

中国「地政学的前進」

中国ラオス鉄道の軌間は中国国内と同じ標準軌(1435mm)のため、タイ国鉄と車両の直通はできない。だが、貨物の載せ替えが必要となるとはいえ、タイやマレーシアへの物資輸送がマラッカ海峡を通ることなく陸路で完結するのは、中国にとっては大きな地政学的前進だ。

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こうした中国にとっての多大なメリットがあるからこそ、中国ラオス鉄道が「一帯一路の重要プロジェクト」「近隣諸国の利益のための一帯一路構想の縮図」と評されるわけだ。旅客営業開始日の12月4日には、昆明から貨物列車がビエンチャンに向け出発し、1000kmの距離を走り通した。

コロナ禍の影響で、旅客輸送についてはまず国内区間の開業となった中国ラオス鉄道。両国間を結ぶ本格的な開業の後は、どんな形でのヒト、モノの動きが起こるだろうか。2月の旧正月には、雲南省区間を含む「中老昆万鉄路」を100万人が利用する見込みとの報道もある。

圧倒的な中国の影響力拡大となるのか、それともASEAN側の利益やメリットが生まれるのか。今後もさまざまな点で目が離せない鉄道となりそうだ。

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さかい もとみ 在英ジャーナリスト

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Motomi Sakai

旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドンを拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かし、日本に向けた提言等を発信している。著書に『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)など。問い合わせ先は、jiujing@nifty.com

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