宇宙にエイリアンがいるのか本気で考えてみたら 「フェルミのパラドックス」vs.「浸透理論」

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人類は月に降り立っており、恒星間旅行は1950年の時点ほど無茶なものには思えなくなっていた。すると、もし恒星間旅行が可能で、文明が天の川銀河全体に入植できるだけの時間があったとしたら、なぜ彼らはここにいないのだろうか? 

サスカチュワン大学(カナダ)のデイヴィッド・スティーヴンソンは、1977年に『英国惑星間協会誌』に投稿し、この「パラドックス」を「フェルミのパラドックス」と呼んだ。それで名前が定着した。

SETI界隈の一部の人にとって、ここから見出せる唯一の結果は悲観的なものだった。このパラドックスの仮定に立てばETは本来いるはずなので、ETが今ここにいないのなら、それは存在しないことになる。

エイリアンの文明が別の惑星系へ向かったとしたら

ほかの恒星を周回する惑星に入植してから有人の派遣団が送り込まれると、一部のコロニーはだめになるおそれもあり、かりにだめになったら、天の川銀河を征する途中でそのコロニーは行き止まりになってしまう。

SF作家で、NASAのジョン・グレン研究センターで働く科学者でもあるジェフリー・ランディスによれば、これでフェルミのパラドックスに加え、G‐HATの結果も説明できるという〔注:G‐HATは「エイリアン・テクノロジーによる熱の検出」の略称。恒星や銀河全体のまわりに、ETの文明が存在する証拠としての赤外放射を探すプロジェクト。現在、有力な証拠はひとつも得られていない〕。

ランディスは、物質がなんらかの環境に浸透する際にどのようにつながったり凝集したりするかを説明する「浸透理論」にちなみ、自分の考えを「浸透モデル」と呼んだ。このモデルは次のようなものだ。たとえば、ある文明がひとにぎりのコロニーを宇宙に打ち上げ、それぞれ別の惑星系へ向かわせたとしよう。彼らは入植の大事業に、現在われわれが可能であると知っている物理学と工学を用いて乗り出す。したがってワープドライブは考えない。

次ページひとにぎりのコロニーが成功を収めた後に
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