色つきリップもある「メンズコスメ」好調続く背景 外出機会が減っているのになぜ売れているのか

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そのきっかけとなったのが、2013年に誕生したメンズスキンケア専門ブランド「バルクオム」の洗顔料「ザ フェイス ウォッシュ」だ。それまで男性用の洗顔料といえば、顔の脂をさっぱりスッキリしっかり取り除く数百円〜1000円以内のものが一般的だった。

しかし、この洗顔料は、不要な脂は取り除くが、肌の潤いはしっかり残すせっけんで、しっかり泡立ててから使用するのが特徴。価格は2200円(税込み)と高額で、パッケージもモノトーンを基調としており、シンプルでおしゃれだ。

「バルクオム」のコーナー。木村拓哉さんをCMに起用している(筆者撮影)

2016年にその商品を有名俳優がSNSで発信したことにより、口コミで広がり爆発的に売れた。この洗顔料をきっかけに、化粧水、乳液ラインへ手を伸ばす人が広がっていったという。

こういった背景もあり、ロフトでは2017年に「銀座ロフト」をオープンするにあたり、メンズコスメ売り場を広く設けた。

SNSやネットで調べて購入

「男性はコスメ自体が初めてで、どれを選べばいいかわからない。女性のように美容部員に話を聞くのはさすがにハードルが高い。メンズコスメの市場拡大はちょうどSNSが盛り上がり始めた時期ともかぶっており、ネットやSNSを自分で調べて購入しに来る人が多い」(廣末氏)

特にメンズコスメで特徴的なのはヘアサロンブランドの人気が高いことだ。男性が最初に手を出すコスメ関連商品といえば、ヘアスタイリング剤ということもあり、美容師への信頼度も高く知名度もある。

例えば、2019年にメンズ界のカリスマサロン「LIPPS(リップス)」から誕生したメンズコスメブランド「LIPPS BOY」。ヘアワックスやヘアオイルだけでなく、化粧水からファンデーションまで取り扱う。

「LIPPS BOY」からはフェイスパウダーやリップバームも発売されている(筆者撮影)

「ロフトでも使い方のワークショップを行ったほか、美容室で施術を受けたり、美容師さんがSNSで使い方動画を発信したことで、本来なら使い方が難しいと思われるコンシーラーが売れた」(廣末氏)

表参道を拠点にするメンズヘアサロンOCEAN TOKYO(オーシャントーキョー)がプロデュースした人気のヘアケアシリーズ「OCEAN TORICO(オーシャントリコ)」からも、2021年5月(ロフト先行発売)に男性用スキンケアシリーズが発売され、好調に売れているという。

このように、5〜6年前から若い人を中心に拡大していたメンズコスメの市場に、前出のバルクオムが最初の緊急事態宣言時からテレビCMを打ち出し、さらにマーケットが拡大。コロナ禍をきっかけにビジネスマンが加わった。

「メイクは、バレないもの、自然なものが売れる。男性用洗顔料も以前は数百円〜1000円以内の価格帯だったが、バルクオム2200円(税込み)を基準に、今ではそれよりも高い価格帯も出てきた。

女性ブランドから参入した『アスタリフト』が男性用にも女性と同価格の1万3200円(税込み)の美容液を投入したところ、(ロフトでは)同ブランドのラインの中で一番売れている。

今まで『スキンケアといえばニキビケア』だったが、ワンランク上のスキンケアへの関心が高まり、むしろニキビケア商品が売れない時代となっている」(廣末氏)

今までまったく手入れをしてこなかった男性が、きちんと手入れをしだすと肌環境が改善されたということなのだろう。

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