丹羽宇一郎・駐中国大使--早期に農業問題を片付け日中韓の共同市場実現を

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東シナ海については、(中国が開発を進める)白樺ガス田への日本の出資比率などをめぐる実務協議が始まった。これがうまくいけば、もう少し北の海域での共同開発もうまく進むだろう。本件は5月の温家宝首相来日時に、日中の「戦略的互恵関係」をさらに推進することで合意した。それが具体的な形で始まるわけだから、非常に大きな前進だ。

いちばん大事なことは、北東アジアの海域の平和と安定を維持すること。ここに波風が立つと、アジア全体に影響が及ぶ。中国と日本が世界における自分たちの地位をよく自覚し、お互いに自重して話し合うことが重要だ。そのためにはチャンネルを保っておくこと。それが、両国民が安心して生活できる基本だ。中国も大国になったのだから、自国の発言、行動の重みを自覚してほしい。

--「戦略的互恵関係」について、大使はどう定義しますか。

戦略的互恵関係とは、日中両国にとってウィン・ウィンであるということ。1000年も2000年も付き合うわけだから、山も谷もあるだろうが、大きな山谷をつくらないように利害を調整していく。日本は「愛国親中」、向こうは「愛国親日」というベースの中で、耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍ぶこともあるだろう。

たとえば、南シナ海をめぐり関係諸国間で紛争があったとき、「東シナ海を見てみろ、戦略的互恵でうまくやっているじゃないか」と言われるような関係であるべき。外交の見本にしていかないといけない。

(聞き手:鈴木雅幸・週刊東洋経済編集長、西村豪太、渡辺清治 撮影:今井康一 =週刊東洋経済8月7日号)

にわ・ういちろう
1939年名古屋市生まれ。名大法卒。62年伊藤忠商事に入社、食料畑を歩む。98年社長、2004年会長、10年4月から6月まで取締役相談役。中国関係では北京市などの経済顧問を務めた。

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

 

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