無印良品が異例の「大量採用」に踏み切る舞台裏 間口を広げて「個店経営」の担い手確保急ぐ

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「第二創業」を掲げた無印の中計のポイントは大きく2点ある。1つは、積極的な出店戦略だ。

良品計画は中計最終年度の2024年8月期に、国内で年間純増100(2021年8月期は純増18)、中国本土で年間純増50(同純増25)のペースを目指し、段階的に出店数を増やす方針だ。出店拡大により、2030年には売上高3兆円(2021年8月期売上高4536億円)という大目標も打ち出している。

今後は食品などの品ぞろえも、地域の特性に応じて店舗の決める裁量が大きくなる(撮影:今井康一)

2つ目は、各店舗が出店先の地域に密着すること。今後は地域の需要に合わせた店舗ごとの品ぞろえや、行政や地元の農家などと連携した独自の事業活動を積極化させる。今後は本部よりも店舗の裁量を増やし、”個店経営”への移行を進める。

この戦略を着実に実行するうえで必要となるのは、個店経営の担い手となる社員たちだ。

良品計画で人事など管理部門全般を担当する横濱潤執行役員は「通年採用には、より多くの人数を採用することと、新卒にこだわらずいろんな人を採用する、という目的がある」と語る。留学経験者や第二新卒など、決められたシーズンに行う採用活動ではカバーできなかった人にもチャンスを広げ、社員の多様性を高める狙いだ。

「マニュアル経営」が十八番だったが・・・

実際、会社説明会には以前では考えられなかったような、自治体での事業経験者や、霞が関での職務経験者らも参加するようになったという。「無印がプラットフォームとして面白いことをやるかもしれない、と思って参加してくれる人が増えた」(横濱氏)。

ただ、個店経営への移行は、口で言うほど簡単なものではない。

無印の堅調な成長を支えてきた独自の企業風土の1つに、店舗間の売り場のばらつきなどを抑えるためのマニュアル経営の徹底がある。

1989年に旧セゾングループから独立し、右肩上がりで拡大を続けた無印だったが、2001年2月期からは2期連続で減益に陥った。

その立て直しを託された松井忠三社長(当時)は、セゾングループ時代から引き継いだ、社員1人ひとりの感性や勘に頼りすぎる経験至上主義が業績不振を招いたと分析。店舗業務などの内容とその目的を明文化した独自の膨大なマニュアル「MUJIGRAM(ムジグラム)」を作り上げ、成長軌道を取り戻した。

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