「リープフロッグ」が日本企業に求められる理由 急速な「中国のデジタル化」にどう対応するか

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またタクシーでは、細かな現金の用意も不要で、アプリでスマート決済ができる。数年前までは、手を上げても乗車拒否があったり、運転手によっては応対の悪い人もいたが、今ではすべてスマホの配車アプリから予約することで、トラブルも減った。

ここでは運転手の応対の評価が付けられるようになっていて、悪い評価が重なるとドライバーに仕事がなくなったり、近距離でも条件が合えば応対よく乗車が可能となったりしている。

上記の評価システムはECサイトにも導入されており、購入後の販売者への評価がセットになっていることで、その信頼性スコアの評価も同時に実施される。

中でも「大衆点評」という口コミ投稿サービスのアプリには、ショッピング、エンターテインメント、ホテル、サロン、クリニックなど3000万件以上の登録店舗数があり、お店選びのみならず、レストランでのメニューまで、アプリ上で評価を見て決める人が多い。

現在、中国のインターネットユーザーは約10億人と、国民の7割を超え、動画を使ったECサイトや、ライブ配信によりリアルタイムで商品を販売するライブコマースも急速に伸びているが、その背景には、世界一の5G普及率を誇る高速通信環境の充実が大きく寄与している。

BYD本社と社員寮をつなぐモノレールの改札口にも顔認証が導入されている。デジタル化の一例(筆者撮影)

変革が起きた3つの理由

決済システムの安全性に対する信頼が強くなり、ECサイトでの購入が一般の生活に溶け込んでいった。これは、ビジネスの根幹として実行したIT企業が、プラットフォームやアプリの開発により、一般消費者の悩みを解決できたために進んだことだ。

では、なぜこうした変革が起きたのだろうか。1つ目の理由は、高度なアプリ活用には欠かせない高精度の位置情報が開発されたことにある。

中国では、精度の高い衛星測位システム「北斗」に、これを取り扱うアリババグループと巨大国有企業「中国兵器工業集団(CNIGC)」の合弁で2015年に設立された「千尋」を組み合わせることで、その精度を1~2cmまで上げることに成功した。

この連携により、世界で最も普及している5Gの威力をさらに発揮していくだろう。実際、中国では115万基以上の5G基地局を建設しており、世界の約7割を占める5Gグループネットワークを構築しようとしている。

2つ目は、中国社会では口コミが重視されることである。グルメサイトやタクシーの配車アプリに利用者が書き込むことで信用スコアができるようになっていて、新たな利用者はそのスコアを見て選ぶため、評判の悪い店やタクシーは誰も利用しなくなる。

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