三谷幸喜が前立腺がんの病歴を明るく振り返る訳 同じ不安を抱える人のために彼は立ち上がった

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今年ちょうど60歳を迎えた三谷のいまの心境とは。「病気になったというのもあるんだけど、年齢的なことで、自分の人生が無限じゃないんだというのが、どんどんリアルに感じ取れるようになっています。30代の頃なんて計画性もなかったし、いくらでも時間があるから、好きなこと、やりたいことをどんどんやっていこうみたいな感じだったんですけど、やっぱり、40、50、今ちょうど60で、あと何本できるんだろうかとか、映画何本撮って、舞台何本やって、ドラマあといくつできるだろうか、というのが本当に具体的に見えてきているんですよね」

「そうなるとやっぱりちょっと焦る。しかも一回こんな病気もしていますから。これ、うかうかしているともう終わっちゃうんじゃないか、みたいな不安は昔よりすごくあります。だから、落ち着いている場合じゃないなと。円熟味なんてくだらないものは放っておいて、とにかくやれるものを、思いついたものをどんどんやっていかないと。もう先あと何年生きられるかわからないけど、亡くなる時に、やっぱり満足して死にたいですからね。あとどれくらい作れるか、というのはものすごく感じます」

「気を付けろ、うかうかしてられないよ」

そして、「ほんと、もし過去に戻れるのであれば、40代の自分に対して言いたいことがいっぱいありますもん」と顔をしかめた。「気をつけろ、うかうかしてられないよ、とね」。

「すごい悔やまれますもん。こんなことだったらもっとちゃんと仕事しているんだったな、みたいな部分って。まあ、仕事としては全部楽しかったんですけども、本当にやりたいことと、やっぱり頼まれて断れなかったものとかもありますし。どうしても性格上、人間関係を優先してしまうので、誰かお世話になった人に頼まれたら恩を返すみたいなつもりで仕事したりするんです。それもいいけど、そればっかりだと良くはないよ、という話をしてやりたいですね」

器用な天才のように見えていた三谷にすら、人生の後悔はあるのだ。

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