北朝鮮の対外窓口、羅先市に集まる海外企業 環日本海経済研究所の三村光弘調査部長に聞く

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――同時に投資説明会も開かれたと聞いています。また、2012年から約2年間で中国からは40社程度が進出しているようです。

展示会で販売されていた羅先貿易会社の太陽光パネル(三村調査部長提供)

開催期間中に1回だけ開かれた。今年は、実際に進出している中国など、外国企業が「羅先の魅力」をアピールするような機会もあった。ただ、投資誘致のあいまいな話で、実際に投資する際に必要なことなど、具体的な話はなかった。

外交的に日本からはまだ投資できるような環境ではないが、最も羅先と距離が近い中国、ロシア企業からもまだ容易に投資できる状況ではないだろう。

中国からも、大企業が率先して投資するようにならないと、ほかの中小企業は投資できない。リスクがある国には、投資法制上でも、投資は簡単ではない。中国・吉林省は「羅先経済貿易地帯朝中共同開発および共同管理管理委員会」を設立して、中国企業の権利保護・紛争処理なども扱おうとしている。

要は、トラブルが起きても投資企業が安心できる体制をつくっていくことが先だろう。それでも、共同開発・共同管理のスキームが動き出した2012年以降に約40社が進出しているのは多いとは思うが。

中国からの企業進出で、カネ回りが良くなった

――羅先市内はどのような様子でしたか。

昨年と比べて明るくなった。特に、市内の「商業物流中心」という施設周辺は人通りも多く、明るい。中国からの進出で、カネ回りもよくなったようだ。また、中国人観光客も入るようになり、さらに経済的に活気を帯びていた。1日300人程度が1泊2日で入るツアーが開始され、宿泊したホテルもにぎわうようになっている。

市内の通貨はほとんど人民元。現地通貨の表示もローカルな市場などで見られる程度だった。レートは1人民元=1200~1400ウォン(北朝鮮)程度か。ほとんど人民元表示だったので、中国の物価と比べながら買い物をしていたほどだ。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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