孫正義社長の後継者求む! ソフトバンクアカデミアが開講

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「五分五分の勝率で勝負を仕掛けるのはバカがやることだ。武田勝頼になる。『このまま行くと負けるぞ』という状況で、突っ込んで負けてしまう。退却ができないヤツとは、クルマで言えば、ブレーキのできないクルマ。私が勝頼の状況なら、恥も外聞もなく逃げる。勝頼は3割失った時点で、『これで退いたらもったいない。取り戻さないと』と、意地になってしまったのだろう。これはバカの典型だ。意地で会社をやると、会社をつぶすことになる。株式投資でもそう。失敗するのは撤退の時機を見きわめられなかったときだ」

孫社長は「退却は10倍の勇気がいる」とも強調した。

「僕は過去おびただしい数の退却をしてきた。(退くとなったら)僕は早いよ。メディアにめちゃくちゃに書かれます。恥ずかしい思いをする。これに耐える勇気を身に付けないと、リーダーにはなれない。うまく行っているときはいい。皆が割れ先にと、飛び出していくから。だが、退却の決断はトップしかできない」


 「流」の項では、避けなくてはならない失敗のパターンについて触れた。それは流れに逆らった経営のあり方だ。斜陽産業に自ら進出することは決してしてはいけないと孫社長は言う。次の流れを読んで、仕掛けて待つ。これが経営の本流だという。

「かつて富士通がパソコンのOS(基本ソフト)にマイクロソフトを選ばず、(80年前半までのパソコン黎明期に主流だった)CP/Mを選んだことがあった。そのとき僕は役員にバカだと言いました。そうしたら、『孫さん、あなた技術のことはわからないだろうけど、CP/Mはここがこう優れていてね……』と枝葉末節のことを説明する。しかし、そんなものはすぐに追いつかれる。事業家は、時代の流れの王道を進まければ失格だ。通信方式でも同じ。CDMA2000を選んだ事業者(au)がいる。悲しいばかりの失敗。(高速通信で)一時的に先行する、成功する……ただそれだけのために、最後までメインになれないところを選んだ。沈みゆくもの、枝葉になるものを選んではいけない」

ハイテンションの孫社長は2時間半の講義中、立ちっぱなし。毎週水曜日に開催していくこのアカデミアでは、今後入校生各自にプレゼンテーションを行わせ、互いの採点をさせる予定だ。

最初の課題は「社長在任の10年で、どうやって時価総額を5倍にするか」に決まった。どの事業領域で、どんな方法で、資金調達をどう工面して……これらを具体的に論じさせる。下位10%を半年ごとに入れ替える形で選考を進め、10数年後までに後継者を選ぶ壮大な計画だ。年商3兆円近い企業の社長候補を半ば公開の形で選考していくという、ソフトバンクの新たな試み。最終的にどんな人物が選ばれることになるのか。今から楽しみだ。

(桑原 幸作 =東洋経済オンライン)

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