リクルーターによる採用は、OBが出身大学へ出掛けて行き、後輩と面談して会社のことを伝え、自社の採用コースに誘うことから始まります。これを学生の側から見ると、大学OBが就職していない企業への就職の道が、最初からほとんど閉ざされていることになります。また、たとえ同じ大学であっても、サークルやゼミを通じてそのOBと知り合いでないと、接触される可能性が著しく下がることになります。
一方、企業側から考えると、従業員を大学へ派遣するにはコストがかかります。少なくとも、就職支援サイトを使ってエントリーしてもらうことに比べれば、圧倒的にコストが高くなるでしょう。そのコストを少しでも抑えるために、企業としては「どの大学までリクルーターを送るか」を判断しなければなりません。
一般に、偏差値の高い大学出身者のほうが採用選考を通過しやすいことを、企業の採用担当者は経験的に知っています。結果として、人気企業は偏差値の高い大学に集中し、それ以外の大学の学生は、たとえどんなに優秀であっても、人気企業への就職の道が最初から閉ざされてしまっていたのです。
「リクナビ」が就活をオープンにした
こういった状況は長い間、続いていたのですが、リクナビが影響力を高め始めた2000年代前半から、劇的に変わっていきます。
この頃から、学生は就活支援サイトを通して、自分が希望する会社に自由に応募することができるようになりました。このオープンエントリーのシステムは、今でこそ当たり前のことだと思われていますが、実はリクナビの登場によって作られた、比較的新しいものなのです。
もちろん、フタを開けてみたら上位校の学生ばかりが内定していたという企業もないとは言えませんが、少なくとも「挑戦もできなかった」状況と比べれば、就活は圧倒的にフェアになったと言えるのではないでしょうか。実際に、リクルーター中心に採用活動をしていた時期と比べ、内定者の出身大学がバラエティに富んできた人気企業も多いのです。
リクナビをはじめとする就活支援サイトにはさまざま問題があり、批判も寄せられていますが、このオープンエントリーのシステムを作ったという点では、高く評価できるのではないかと考えています。
就活後ろ倒しで、採用は再びクローズドに
さて、リクナビ登場とともにオープンになった就活ですが、今回の「就活後ろ倒し」によって、再びクローズドなものに逆戻りしてしまうおそれが非常に強いと考えられています。これこそが、就活後ろ倒しの「衝撃」として、最も影響が大きい点なのです。
それではなぜ、単なる時期変更にすぎない就活後ろ倒しが、採用をクローズドにしてしまうのでしょうか。
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