BBCにツイッターをやらない記者はいらない ソーシャル時代のニュースメディア像

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――各記者がツイッターにアカウントを作り、それを自己運用していると聞くが。

そうだ。

――BBCのような大きな組織で、社員がいわば勝手にツイッターを使っているとしたら、驚きだが。

しかし、実際にそうなっている。BBC側は記者にツイッターを使う際の指針を与え、一定の研修を受けさせる。間違ったことをつぶやいてしまったら、問題になるが。

ジャーナリズムの分権化だ。ソーシャルメディアを記者個人が運用する権利を記者に与えているーすべての記者に対してではないが。記者自身が誰の指示も得ずに自分でつぶやくようにしたほうが早いし、他の人がチェックする必要はない。管理者側は記者を信じる必要がある。記者は利用に責任を持つ。あらかじめ提示された指針に沿っている限り、問題はない。

「意味のあることを発信しよう」

――指針の内容は?

例えば、「馬鹿なことを言わないように」、ガザなどの紛争地について「個人的な見解を提供しないこと」。「意味のあることを発信しよう」。

――ニュースサイトには記者が書くブログ記事が多数あるが。

少人数の目を通して発信されるため、自由度が高い。投稿記事を書く記者のほかにもう1人編集部内で誰か他の人、例えばデスククラスの人物の目を通させた後に出る。

――ソーシャルメディア使いにおいて記者に権限を委譲する「分権化」はいつから始まったのか。

ソーシャルメディアが広まりだした頃、ニュースを早く伝えるには分権化が必要だと考えるようになった。早く情報を出していくために必要だった。

一つの大きなきっかけは2005年のロンドン・テロだ。地下鉄やバスがテロリストに攻撃を受けた。このとき、他の報道機関と比較してBBCは出遅れた。他の報道機関は視聴者からの情報を元にしてどんどん報道していたが、BBCは亡くなった人や負傷者の数について警察からの公式な情報を待つなど反応が遅かった。

BBCは当局と近すぎる、市民をパニックに陥れないために重要な情報を隠しているという疑念が視聴者の間で生まれた。注意深く、じっくりと情報を吟味して報道することはよいことだと思っていたが、死者・負傷者数の報道が遅かったことが問題視され、視聴者の信頼を失った。そこで、方針を変えることにした。

BBCの活動資金を出すのは視聴者だ。BBCは報道機関だし、報道機関としてニュースを早く出せないなら、視聴者は支払った価値がないと思うだろう。

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