「沖縄の民意」は、なぜ無視され続けるのか 知事選に向けヒートアップする本土・沖縄関係

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沖縄の保守勢力は普天間問題で分裂した。自民党県連幹事長を務めたこともある那覇市の翁長雄志市長(63)は10日の市議会9月定例会で、県知事選への出馬を表明した。市議会の元自民市議らを中心に共産、社民なども翁長市長に相乗りする。出馬表明の中で翁長市長は、「イデオロギーでなく、アイデンティティーに基づくオール沖縄で、責任ある行動が求められている。今後100年置かれる基地を造らせてはならない。これ以上の基地の押し付けは限界だ。辺野古への移設は事実上不可能だ」と語った。

分裂した沖縄の保守勢力

翁長市長の出馬について、菅義偉官房長官は同日午前の記者会見で、「昨年暮れに仲井真弘多知事が埋め立てを承認し粛々と工事を進めている。この問題はもう過去の問題だ」と言い切った。政府は普天間問題の争点外しに躍起だ。県民の辺野古反対は各種世論調査で明らかだが、政府は新知事が誰であっても普天間問題はもはや“解決済み”と言い張る構えのようだ。知恵のない政府にとって沖縄の民意は邪魔なものでしかない。

日本の病理が見える沖縄問題。11月の沖縄県知事選で安倍政権は普天間の辺野古移設に賛成する仲井間知事を再選させるためあらゆる手を打ってくるだろう。このまま日本の病を進行させるか、民意で少しでも食い止められるか。大一番に向けた激しい攻防が、南の島で過熱している。

屋良 朝博 ジャーナリスト

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やら ともひろ

1962年沖縄県生まれ。フィリピン大学を卒業後、沖縄タイムス社入社。1992年から基地問題担当、東京支社を経て、論説委員、社会部長などを務めた。2006年の米軍再編を取材するため、2007年から1年間、ハワイ大学内の東西センターで客員研究員として在籍、2012年6月に退社。現在、フリーランスライター。著書に、「誤解だらけの沖縄・米軍基地」、「砂上の同盟ー米軍再編が明かすウソ」など多数。

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