「好物は最後に食べる」派の5歳少女に起きた事件 父への食べ物の恨みは、形を変えて今も残る

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「私はテレビを見て、よそ見していたんです。そうしたら、いつの間にか父が骨付きウインナーにかぶりついている……その光景がもう本当にショックで、私はただ黙って自分の骨付きウインナーが食べられていくのを眺めていました」

その後、5歳の娘が静かに涙を流していることに母が気付き、楽しいクリスマス会は一変。お父さんは大慌てて機嫌を取ってきたが、微妙な空気のまま終わったという。

家庭内の食事ルールが厳格化

この出来事を機に、2つの変化が訪れた。1つは食卓におけるルールの明確化だ。

「私が泣くのを見て、お母さんも感じ入るところがあったんでしょうね。その日以来、『これとこれとこれは、私が食べるから』と、事前申告することになったんです。唐揚げのように、個体差のないものは個数を指定して、お寿司とかおでんだと具材を指定する感じです」

そしてもう1つは、香織さんの中での変化だった。

「集団で食事をしているときに、食べる量が均等かどうかがすごく気になるようになったんです。例えば小学生の頃、遠足に行ったときのエピソード。秋田には『なべっこ遠足』っていって、5~6人の班に分かれて、みんなで持ち寄った道具や具材で芋煮を作る遠足があるんですけど、お鍋なのでフリースタイルなんですよね。分けてもらえる給食と違って。だから、何杯もよそう男子が出てくる。

それを見て、私は『このままだとあの女の子が1杯しか食べられない……芋煮めちゃ好きだったらどうしよう……』って気が気じゃなくて。でも、食べすぎる男子を注意できる性格でもないので、『自分は1杯で我慢しよう』って。食べられてショックだったからこそ、均等に分けたい気持ちが強くなったんです」

小学生の頃から自己犠牲の精神を持っていた……と形容するのは若干大げさかもしれないが、香織さんの優しい性格が出ているのは間違いない。

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