皮膚に粘着剤なしで貼れる超薄膜がやたら凄い訳 薄く丈夫で負担少ない電極の登場で何ができる?

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ちなみに、私たちは「分厚い=強い」「薄い=弱い」という先入観を持ってしまいますが、必ずしもそれが正解とは言えません。例えば、「曲げたときの歪みに対する強さ」は、分厚いものよりも薄いもののほうが優れています。下敷きのようなある程度の厚みを持つものは曲げていくとペキッと割れてしまいますが、薄い食品用ラップは曲げても割れることはありませんよね。薄くすることで得られる強さもあるのです。

粘着剤がないのに、どうして貼り付く?

この電極の驚くべき点は、薄さだけではありません。粘着剤を使っていないのに皮膚に貼り付くことです。粘着剤を使用する電極は、連続した使用により粘着力が低下。精密な計測が困難になります。しかし、この電極は貼り付けて1週間後も、貼り付けた直後と同等の計測ができたとか。いったいなぜ、皮膚に貼り付くのでしょうか。

その答えは、ズバリ! 「ファンデルワールス力」です(一度でも高校で化学を学んだ人にとっては「懐かしい!!」と感じる語句ではないでしょうか。コテコテ文系のかたは今から一緒に勉強しましょう)。

例えば、プラスの電気を持っている粒子と、マイナスの電気を持っている粒子のあいだに引力が働くのはイメージできますよね。プラスとマイナスは引き合いますから。

それに対して、ファンデルワールス力は、プラスでもマイナスでもない(電気的中性といいます)粒子のあいだにも働く引力です。ちょっと不思議な感じがしますよね。電気的中性の粒子同士が引き合うなんて。なぜでしょうか。

私たちは人と関わりながら生きているので、日々の生活の中で精神的に不安定になる(イラっとする)瞬間がありますよね。電気的中性の粒子も、1粒で存在しているわけではなく、周りには常にたくさんの粒子があるため、不安定になる(プラスマイナスの偏りを生じる)瞬間があります。イライラは伝染するものです。周りにイライラした人がいると、こっちまでイライラしてしまうように、プラスマイナスの偏りを生じた粒子の周りに存在する粒子も、その影響を受けてプラスマイナスの偏りを生じ、お互いに引き合うのです。

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