米テスラモーターズが描く電気自動車革命 高級セダン「モデルS」の日本納車を開始

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モデルSを開発中だった08年のリーマン・ショック時には資金繰りが悪化し、経営危機に陥る。「当時、電気自動車のために資金を集めようとするのはほぼ不可能に近かった」とマスクCEOは振り返る。結局、彼自身が資産を注ぎ込んだうえ、トヨタ自動車、独ダイムラーという2つの自動車メーカー、電池を供給するパナソニックという3つのパートナーからの出資を受け、何とか持ちこたえた。「3社の出資がなければ成功はなかった」(マスクCEO)。特にパナソニックとの関係は強固で、モデルSに搭載されているリチウムイオン電池セルの全量を同社が日本の工場から供給している。

窮地から脱したテスラが満を持して建設するのが、17年の稼働を目指す巨大電池工場「ギガファクトリー」だ。モデル3の戦略生産拠点となる予定で、電池の大量生産と同時に電池生産コスト3割減を目指し、フル稼働となる20年には年間50万台の販売を見込む。マスクCEOが描く量産車=モデル3の成功はまさにギガファクトリーが握っている。

 特許開放の真相

量産車の開発はテスラが描くEV普及シナリオに欠かせない。8日の会見でも「持続可能な輸送手段」の重要性について繰り返した

ここでも、テスラを支えるのがパナソニックだ。今年7月には同工場への共同投資で合意。テスラが土地や建物を準備し、パナソニックが電池の生産に必要な設備投資などを担う。投資額は4000~5000億円となる見込みで、そのうち半分をテスラが拠出する。パナソニックは「3~4割を投資する」(マスクCEO)見込みだという。

もっとも、EV普及に向けたマスクCEOの取り組みはこれにとどまらない。過去の東洋経済のインタビューで「自社より優れている技術があればそれを採用している。ただし、組むのはその分野でベストなサプライヤー」と話している通り、量産車開発に向けても、テスラ単独で挑むより最適なパートナーを選んで目標を達成する。

実際、マスクCEOは今年6月、テスラが持つ特許の開放という自動車会社としては前代未聞の決断を下した。「我々の特許を、電気自動車を開発したいと思う他社に使ってもらう。EVの普及に全力を尽くす」と意気込む。「もしかしたら将来的に馬鹿な決断だったといわれるかもしれない」とも笑うが、その眼差しは真剣そのものだ。

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