アップルはいったい何を発表するのか? 新モバイル時代をどうデザインするかに注目

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現在のスマートフォン市場は、グーグルのモバイルOSであるAndroidが8割以上のシェアを占めている。これまでサムスン電子がその中のトップブランドだったが、モトローラ・モビリティをグーグルから買収したレノボやファーウェイといった中国メーカーが低価格端末をリリースしている。またグーグルはインドで低価格帯デバイスの充実を図り、さらにシェアを高めていくことになるだろう。

こうした状況そのものをアップルは変えようとは考えていないようだ。ただし、四半期ごとに5000万台以上を出荷するようになり、同社のビジネスの核となったiPhoneを、最も優れたスマートフォンブランドとして維持しながら、iPhoneユーザーに対してプラットホームビジネスを展開する考えた。

iPhoneが生活のプラットフォームに

もちろん、App Storeでのアプリの販売もこれに含まれるが、アップルが作ろうとしているのは、iPhoneが、生活のプラットホームになる世界だ。

6月に行われたWWDC14で披露され、9月中に利用可能になるとみられているiPhone・iPad向けの次世代OS「iOS 8」から導入されるHomeKitやHealthや、既に導入されている自動車の車載機と連携するCarPlayは、iPhoneと、身の回りのモノ、あるいは自分自身とを連携させるための仕組みだ。これに、決済も加えようとしている。iPhoneを核にライフスタイルを組み立てた人に、iPhoneを使い続けてもらおうという戦略が透けて見える。

もちろん、魅力的なデザインやテクノロジーを新製品に求めることは当たり前だ。しかし、購入した興奮がしばらくすると冷めると、今度はその製品がある日常がどのように変わるのか、ということにフォーカスが移ってくる。そのとき、iPhoneユーザーが何を体験するか、をアップルは考えている。

これまでのiPhoneは、デザインと使いやすさ、そして最新のアプリが次々に登場する目新しさで、ユーザーを惹きつけてきた。今回も同じ事が起きるが、その先をデザインし始めていることに注目し、発表を見守りたい。発表のレポートや新製品について、追ってレポートする。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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