再上場すかいらーく、"マック化"回避が焦点 ファンド流再生の真価はいかに

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そこで、06年に野村証券系の投資ファンドと組んでMBO(経営陣による自社買収)を実施。上場廃止となり、ファンド傘下で改革を進める道を選んだ。費やした金額は約2700億円と、国内のMBOとして最大規模である。

野村時代は企業統治や投資判断の基準作りなど、制度改革に重点が置かれた。だが、不採算店の閉鎖が遅れたことやリーマンショックなどの影響もあり、当期純利益は06年度から5期連続で赤字に。08年には、創業者で当時の経営トップだった、横川竟氏が解任に追い込まれた。

再生手法は"マック流"

その後任としてトップに就いたのが、子会社に20年近く在籍した谷真社長だった。野村傘下での合理化が徐々に実を結び、業績は08年度を底に好転。11年に米投資ファンドのベインキャピタルに転売されると、谷社長は新規出店に頼らず、1店当たりの売上高を増やす戦略を推し進めた。

この戦略にはモデルがある。日本マクドナルドだ。04年に同社トップに招聘された原田泳幸氏は、ITやコンサルなどさまざまな業界から人材をかき集めた。店舗での接客やメニューの提供方法を見直したほか、FC化も含めた店舗網の再構築に邁進。1店当たりの売上高は約1億円から1.6億円まで拡大した。

すかいらーくも11年以降、米スターバックスや金融機関からプロ経営者を登用。特にマクドナルドからは米本社のCOO(最高執行責任者)を務めたアルバレス氏を会長に招聘したほか、日本の店舗運営やマーケティング担当者を執行役員に起用。店舗開発など複数の部門にも、マクドナルド出身者を招いた。

外部のノウハウを活用した既存店の立て直しにより、すかいらーくの業績は一段と改善。13年度の営業利益は225億円まで持ち直す。そして今回の再上場にこぎ着けた。

ベインがすかいらーくを野村から買収するに当たって投じた自己資金は、1000億円程度とみられる。M&Aに詳しい服部暢達・一橋大学大学院客員教授は「想定どおりの発行価格で保有株を売却できれば、ベインが得るIRR(内部収益率)は年38%。投資ファンドとしては大成功といえる水準」と評価する。

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