消費増税先送りで、アベノミクスは復活する 原点は、脱デフレと経済正常化を目指す政策

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安倍首相と石破地方創生相の距離感も気になるところだが、新内閣の政策の焦点は「アベノミクスの原点に立ち返ることができるか」だ(ロイター/アフロ)

6月30日のコラム「なぜ政府の『成長戦略』に期待できないのか」では、「安倍政権が打ち出す成長戦略に期待できない」、より正確に言えば、「期待しても仕方がない」、ことを述べた。筆者が知る限りにおいて、マーケットの世界で、「政府による成長戦略の出来が株式市場を左右する」と真顔で語られているのは、日本だけである。

「成長枠」という名目で膨張する公的セクター

安倍政権の根幹をなす「3本の矢」の政策のうち、第3の「成長戦略」の中では、もちろんTPP参加や規制緩和・改善は望ましい政策である。だが、戦略の中身を見ると、増税実現とセットになったことで、公的セクターの権益を膨らませるメニューの方が目立っている。実際に、2015年度予算における概算要求において、4兆円規模の予算が「成長枠」という名目で称され、予算策定が進んでいる。

成長戦略は、民間経済の力を底上げする政策なのだが、いつの間にか公的セクターの予算の使い方に関わる政策に、すり替わっているということである。もちろん、政府予算組み換えにおいて、非効率な歳出が見直されるのは望ましい。ただ、果たして「成長枠」で増えた政府支出が、民間企業の技術革新を促し、長期的な経済成長を高めることにつながるのだろうか。

このように、「3本の矢」のうち、「第1の矢」、つまり金融緩和強化以外の政策をみると、残念ながら、長期的な経済成長率を妨げかねない政策が多くなっていると言わざるを得ない。これは、消費増税への対応として、補正予算として公共投資を上積みしている財政政策、つまり「第2の矢」も同様だ。建設セクターで人手、材料不足が報じられているのに、市場メカニズムを軽視して、供給力を上回る公共工事の発注が実現している。増税によって幅広く集められた税収が、限定的なセクターに対して、非効率に配分されているのではないか。

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