「最安値を求めてネット検索」をやめた私が得た宝 「1枚50円の名刺」がわが人生を劇的に変えた訳

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この時私は、ふと「あること」を思いついたのである。それは自分史上、初めての思いつきだった。

私はパタンとパソコンを閉じた。そしてちょっと考えて、ヨシと決意し、再びパソコンを開いた。そして「名刺 安い」ではなく、「名刺 活版」という検索ワードを打ち込んだ。

「孤独」をとるか、「貧乏」をとるか

それは、私のささやかな抵抗だった。この過酷な競争社会、そう便利で効率の良いものしか生き残れなさそうな世の中で、あえて、その対極にあるものを買ってみようと思ったのである。

と言っても、やけのヤンパチになったわけではない。

これはこれで、私なりに頭を絞った結果なのだ。

というのはですね、よくよく考えれば、このときの私の眼の前には「2つの恐怖」があるということに気づいたのである。

1つは、前回から繰り返し申し上げている「お金がなくなる」恐怖。

でも、恐怖はそれだけじゃなかった。

「孤独」という恐怖もまた、私の眼の前にデンと横たわっているのである。

そうなんですよ会社を辞めるってことは、給料をもらえなくなるだけじゃなくて、一人ぼっちになるということでもあった。だって私にはもう、毎日通勤する場所もない。愚痴を言い合ったり酒を飲んだりする同僚もない。

そのほかの人間関係も、考えてみりゃほぼ仕事がらみのものばかり。しかも安い家賃を求めて縁もゆかりもない場所に引っ越したので、会社を辞めたその日から、私、これ以上ないほど完全に一人ぼっちである。これはこれで、お金の問題に負けず劣らず大変なモンダイである。

で、この名刺事件において、私はふと気づいたのであります。

私は今、もしかすると非常に大事な場面に立っているのではないか。

具体的に言えば、これから貧乏を取るか、それとも孤独を取るかという選択を迫られているのではないだろうか?

だってですよ、もし激安名刺を作れば、確かに経費は浮く。それはそれで無給の身にはものすごく重要なことだ。しかし一方で、人間関係は何も生まれない。ただネット上でポチッと注文ボタンを押し、お金を振り込んで、名刺がやってきて、それでおしまい。

次ページ貧乏を恐れていると、孤独がもれなく付いてくる?
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