コロナ禍の中「遠距離のまま結婚」した2人の本音 30代後半の2人は、こうして結婚を決断した

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「手放しちゃいけない人なのかもと考えて、その日の夜に実家で両親に相談したんです。実はこういう人がいるんだけど、結婚が前提だと思うと二の足を踏んでしまう、結婚するといろんなことが変わってしまうから、と」

母親の鋭い指摘

すると、母親は「自分の中で答えが出てるんじゃない?」と鋭く指摘。彼女の気持ちが進さんに向いていることを見抜いたのだ。

「父は早くもお祝いモードで、『よかったじゃないか。ビールを飲もう!』と言うだけでした(笑)」

両親に背中を押されて美樹さんは決断ができた。翌日に進さんに電話をして真剣交際をしたい旨を伝えたのだ。

「飛び上がるぐらい嬉しかったですよ~。ウキウキしちゃってね。私は仕事中、ボソボソとしゃべるほうなのですが、声が高くなっていることが自分でもわかりました。その日は職場で『お電話、ありがとうございます!』とハキハキと言ってしまったり」

美樹さんへのインタビューにカットインしてくる進さん。彼の担当業務は自治体における税金関連である。明るくハイテンションな対応をされて、電話をした相手はさぞ戸惑ったことだろう。

のぼせ上がった進さんは美樹さんの住んでいるところに行こうと何度も試みた。しかし、そのたびにコロナ禍に阻まれて飛行機をキャンセルしなければならなかった。東京都内の自治体で公務員をしている進さんの立場を考慮して、中止にすることは美樹さんが判断した。

「中止となって、美樹さんは泣いてくれたんですよ。そこまで自分のことを思ってくれるなんて、嬉しくて嬉しくて……」

ところが美樹さんによれば、進さんを心配していたことは事実だが、何度言っても「会いに行きたい」と繰り返す彼にいら立って泣いた側面もあるという。

「え! そうだったの……。あー、そういえばそうですよね」

タイ料理をつつきながらちょっと意気消沈する進さん。憎めない人である。

感染者数が急減し始めた9月。四国にいる進さんの両親を関東に招いての両家顔合わせがようやく実現した。その直前に進さんは愛車で美樹さんを高級旅館に連れて行き、用意しておいた100本のバラを渡してプロポーズをしたという。そして、感動して泣いたのは進さん自身だった。

「美樹さんは泣かなかったよね」

「先に泣かれちゃうと泣けないよ」

もう、好きにしてください……。しかし、つねに盛り上がっている進さんに比べると、1人で過ごすのが好きで初婚でもある美樹さんには感情の波があった。

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