100円稼ぐのに、916円かかる鉄道会社は? 営業係数で見た「ワースト20鉄道」ランキング

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さらに、定期乗車券のうち、通学定期乗車券の売上高の占める割合が高い20社をまとめてみた。全国平均が5.0%であるところ、60.7%とワースト1位となったのは、やはりくま川鉄道だ。

定期乗車券は重要だが、見直すべき時が来た

同社の1旅客人キロ当たりの旅客運輸収入は通勤定期乗車券が8.6円、通学定期乗車券が9.4円、普通乗車券が22.5円であった。仮に旅客運輸収入に占める普通乗車券の割合が100%だとすると、旅客運輸収入は1億2249万9000円から2億2974万8000円へと増える。

運輸雑収入の126万3000円を加えて営業費の2億5280万5000円とで営業係数を求めると、現状の204.3から109.6へと好転する。

それはともかく、営業係数が100を下回っている鉄道会社は十和田観光電鉄1社にすぎない。その同社も、累積赤字や今後の設備投資を行えないという理由から2012年4月1日に営業を廃止しており、状況は非常に悪い。しかも、「営業係数ワースト20」に登場する鉄道会社の数は、8社に増えた。

誤解なきように申し上げておくが、筆者は定期乗車券の存在が悪いと言っているのではない。特に通学定期乗車券は、教育面で重要な支援であると考える。

しかしながら、現実に旅客運輸収入に占める定期乗車券の売上高の割合が高い鉄道会社の営業係数が、多くのケースで悪いとなると、何らかの措置は必要となろう。

例えば、通勤定期乗車券の利用客の負担がなるべく増えないような施策を講じた後に割引率の引き下げを実施したり、通学定期乗車券の場合は国や自治体から補助金を得て、現状の割引率を維持していくなどの方策をそれぞれ検討してよい。ともあれ、今まで存在するのが当たり前であった定期乗車券も、見直すべき時期に来ているようだ。

梅原 淳 鉄道ジャーナリスト

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うめはら じゅん / Jun Umehara

1965年生まれ。三井銀行(現・三井住友銀行)、月刊『鉄道ファン』編集部などを経て、2000年に独立。著書多数。

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