住みたい街トップは、なぜ吉祥寺なのか

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 街が抱える課題が利便度や公共施設などハード面の充実度から、その自治体の持続可能性や地域の民力度へ移りつつあることを住民も認識し始めている。「住み続けたい」という住民意識が街づくりの原動力となり、街の魅力向上を後押しする。

ネクストが東京都内在住者に継続居住意向を聞いたところ、その度合いでトップとなったのがやはり武蔵野市だった。もともと武蔵野市は住民主体で街づくりを進めてきた歴史があり、地域のネットワーク力でも特筆すべきものがある。これが吉祥寺の人気につながっている。

これからの住民は街の価値向上へ責任や覚悟を負う。人気の街ならそれがより一層強くなる。公的負担だけでなく、地域活動への参加やゴミの分別の徹底など質の高いコミュニティづくりへの高い意識が必要となる。優れた街では、住民に対して街に投資することが求められるのだ。

投資した街がその魅力を維持することができれば、“配当”も期待できる。

東京カンテイが築10年マンションの価格維持率(10年前に買った新築マンションが現在その何割で売れるか)を調べたところ(09年調査)、武蔵野市所在のマンションは徒歩物件で97・8%とほぼ分譲時の価格で売れたという。周辺の杉並区(89・1%)、調布市(90・7%)、小金井市(86・0%)などと比べても、資産価値維持力は際立っている。

住みたい街に住み、さらなる街の価値向上へ住民として努めることは、経済的にも決して損ではない。吉祥寺人気は理にかなっているのだ。

(シニアライター:野津 滋 =週刊東洋経済2010年7月24日号)

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