日本の大手銀行の再編は収益性向上に寄与するが、引き続き課題も《ムーディーズの業界分析》

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こうした中、各行とも、今後の成長戦略を含む、ビジネスモデルの抜本的な建て直しや、戦略の修正の必要性に直面している。

中央三井ホールディングス、新生銀行ならびにあおぞら銀行には、公的資金がいまだ残っており、財務基盤を毀損させることなく公的資金を返済するには、政府保有の普通株式の市場での売却が前提となる。しかしながら、政府が市場で売却する場合には、株価が資本注入時に設定された転換価格を上回っていなければ、返済を受け付けない仕組みとなっており、現在の当該3行の株価水準では、返済することができない。よって、統合・再編により、収益力の強化が図れるようなビジネスモデルが構築できれば、市場からのポジティブな評価も得られ、最終的には株価にも影響し、公的資金の早期の返済も可能になるであろう。

結論

新生銀行とあおぞら銀行の統合は今回は実現しなかったが、ムーディーズでは、単独で両行が事業を継続し、安定的な収益を上げていくには、現在のフランチャイズでは容易ではないとみている。メガバンクも含め、邦銀の収益性は全般的に低く、今後も銀行業界における新たな統合・再編が起きる可能性は、中期的には十分にあると考えられる。

また、昨年は、三井住友銀行(Aa2/P-1)の日興コーディアル証券の買収など、銀行のみならず、証券会社も含めた再編・統合が見られた。メガバンクは成長戦略として、投資銀行業務ならびに海外事業の強化を挙げている。

一方、日本の証券会社については、銀行系以外の独立系大手証券会社である野村ホールディングス(Baa2/P-2)と大和証券グループ(Baa2/P-2)は、銀行グループとは一定の距離を置いていく意向を示していることから、今後さらなる銀行と証券会社を含めた統合・再編は短期的にはないものとみている.

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