日本の経済安全保障に多層的視点が欠かせない訳 国家安全保障の中核としての国際戦略を推進せよ

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従来のような防衛省と外務省の調整という水準にとどまらない枠組みが必要だ(写真:omersukrugoksu/iStock)
独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。

国家安全保障戦略の中核としての経済安全保障

10月13日に岸田文雄政権成立後の最初の国家安全保障会議(NSC)が開催され、そこでは「国家安全保障戦略」の改定についての議論がなされた。すでに10月8日の所信表明演説においても、その改定を明言していたために、2022年後半にその改定作業と閣議決定が行われる見通しである。そこで注目されているのが、新しい国家安全保障戦略のなかで、どのように経済安全保障が位置づけられるかである。

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2013年12月に日本で最初となる国家安全保障戦略が策定された際に、岸田氏は外相としてその策定作業に深く関わっていた。また、自民党政調会長として2020年6月には「新国際秩序創造戦略本部」を立ち上げて、自らが本部長、そして甘利明氏を座長に据えている。そこでは、党としての「経済安全保障戦略」策定へ向けての議論を主導している。

岸田政権下で行われることが予定されている新しい国家安全保障戦略では、経済安全保障が重要な位置を占めることが想定されており、具体的な目標や政策が描かれているかが重要な位置を占めるであろう。適切なかたちで経済安全保障に関する長期的な戦略を打ち立てて、それを通じて日本のパワーを強化して、主体的に国際秩序を形成することができるかどうかが、岸田政権の歴史的評価を左右することになるであろう。

歴史の中の経済安全保障

安全保障と経済が不可分に結びついているということは、1960年に成立した日米安保条約(新安保条約)第2条でも明記されていたものであった。いわば、日米同盟は、誕生の瞬間から経済安全保障をその中核に位置づけていたのである。

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