オスプレイの拙速導入は、安倍政権による濫費 防衛省概算要求に隠された問題<後編>

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島嶼防衛では水陸両用部隊よりもむしろ、空挺部隊や特殊部隊のほうが活躍する可能性がある(撮影:筆者)

ヘリボーン作戦や揚陸作戦を行う場合、事前に特殊部隊を送り込み偵察や監視、場合によっては、対空火器など撹乱、味方の精密誘導兵器の誘導を行うのが定石である。このような潜入任務であればCV-22は極めて有用だろう。

事前に特殊部隊などの偵察も行わず、対地攻撃能力の無いMV-22による強襲を行えば、全滅する可能性は極めて高い。かつての帝国陸海軍の「空の神兵」(落下傘部隊)ならばともかく、現在の自衛隊がそれだけ大きな人的資源の損失に耐えられるのだろうか。

基地が南西諸島から離れすぎている

滞空型無人機(UAV)であるグローバル・ホークの調達計画も、かなり疑わしいものだ。これまた中期防では3機と、そのコントロールを行う地上局を調達するとしている。だが、そもそも防衛省はグローバル・ホークを導入して何を監視するかということを明らかにしていない。

前回も述べたが、現在候補機も絞られておらず、統幕の下に部隊を作るのか、空自と海自で合同の部隊を編成するのかなどど、部隊が、どのように運用するかも決まっていない。つまり、買ってから使い方を考えるといっているに等しい。空港や高速道路などの場合、「とりあえず作り始める。使い方はあとで考える」といった説明をして、予算がつくだろうか。

自衛隊全体のISR(情報・監視・偵察)機能を高めるためのプラットフォームを揃えるのであれば各自衛隊の持つアセットと、将来調達するアセットを検討して、重複や無駄を防ぎつつ、穴がないようにシステムを構築する必要がある。防衛省は既存の海自の哨戒機P-3CのISR能力向上、空自の新しい早期警戒機4機の導入などの予算を概算要求に盛り込んでいるが、これらのアセットと滞空型無人機の関連性や相互補完に関しては述べていない。筆者の知る限り、防衛省内部にもグローバル・ホーク導入には懐疑的な声が多い。

またグローバル・ホークは、合成開口レーダーの角度の関係で小さな船舶などの詳細の識別も苦手であると、ある元海自の将官は述べている。

防衛省のグローバル・ホークの運用構想には無駄が多い。防衛省はグローバル・ホークを三沢ないし硫黄島に配置することを予定しているが三沢から尖閣諸島までの距離は2300キロ、硫黄島から尖閣諸島までの距離は1800キロで極めて遠い。実際に偵察活動をしているよりは該当空域までの移動距離の方がはるかに長いのだ。

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