そう語る健一さんはたいして懐かしそうでもない。遊び尽くして疲れてしまったのかもしれないが、加奈さんとの穏やかな結婚生活のほうに幸せを感じているのだろう。
元気に40代半ばまでは結婚する気もなく飛び回っていたという健一さん。46歳のとき、一度だけ結婚を考えた相手がいた。やはり19歳年下の女性で、「異業種交流会」で知り合ったらしい。
「3カ月ほど付き合って結婚の話もしていたのですが、フラれてしまいました。理由はわかりません。性格の不一致だったのだと思います」
大学時代の部活のOB会長を務めている健一さん。世話好きな性格もあり、若い世代と親睦を深める機会が多い。かつてはそのつながりで合コンなどをしていたので、親子ほど年の離れた女性と知り合うこともできた。なお、同窓会の会員はフェイスブックなどでもゆるくつながっている。
加奈さんとの出会い
「妻はグルメ会の幹事を務めていたので、フェイスブックを通してお互いの存在は知っていました。『友達』になったのは2016年の冬のことです」
翌年の春に健一さんの後輩たちが出場する試合が関西であり、健一さんは同窓会のメンバーを招待した。加奈さんはその一人だった。
加奈さんは健一さんを気に入ったのだろう。お礼として、2週間後の阪神タイガースの試合観戦に誘った。
「そのときに僕が彼女に惚れました。一緒にいる雰囲気が良かったし、共通の話題がたくさんあるからです。翌月には交際を申し込んでOKをもらい、その1週間後には婚約指輪をプレゼントしました」
超スピードの婚約である。健一さんは「共通の話題」とさらりと言うが、そのほとんどは同窓会の人間関係である。彼らの出身大学はいわゆるエリート校なので、特に女性のほうは同じ大学というだけで相手の男性に安心感を覚えるはずだ。少なくとも学歴のことで相手から卑屈な態度を取られる心配はない。
「僕のほうは男性としての限界を感じていたのも大きいです。妻と出会う1年前に若い子と別れてからは誰ともデートしていませんでした」
率直すぎるほど率直にスピード婚約の理由を語ってくれる健一さん。加奈さんのほうも婦人科系の病気を抱えており、子どもを作ることは望めないから19歳年上の自分を選んでくれたと分析する。
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