日経平均が3万円手前でグズグズしている理由 市場が恐れているのはインフレ懸念だろうか

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もちろん、これについては12月に開く臨時国会で成立させ、一般会計の追加歳出は30兆円を超えるとの見方がもっぱらだ。さらに年内に2022年度予算案も編成する。スピード感を持って、成長のための「投資と改革」を大胆に進めるとした。

財務省の「財政規律論」への不安が消えない

これだけの材料が出ているのに、なぜ日経平均はグズグズしているのか。それはズバリ、兜町の市場関係者を中心に会見内容が不安視されているからだ。

本当にアベノミクスやスガノミクスとの差をつける政策が出せるのか。それどころか、「アベノミクス以下のものになるのではないか」という不安だ。

その理由は、今までは官邸主導と言いながら、実際は経済産業省の力を借りたものであり、財務省には不満があった。それを財務大臣の職にあった麻生太郎氏の力で押さえてきたが、鈴木俊一財務大臣ではたして御すことができるかということだ。つまり、財務省主導で「財政規律論」が再び表に出てくるという不安である。

アベノミクスでは、「安倍晋三首相・麻生財務大臣」のコンビの力でこれを押さえてきた。また、スガノミクスでも、新型コロナ対策を錦の御旗に押さえることができた。

だが、ついに「財政規律論が表に出てくるのではないか」という、株式市場にとっては恐怖のシナリオである。「本当に岸田首相の唱える30兆~40兆円規模の政策が通るのか。財務省の理論でみじめな数字に終わるのではないか」という不安だ。

一方、企業業績においても上方修正が相次いでいるのに、株価は不気味なほど上がらない。これについても、岸田新政権への期待感が関連しているといえそうだ。

第2次安倍内閣が発足した2012年12月26日から岸田内閣発足時(2021年10月4日)の前営業日(10月1日)までの立会日数は2111日。この間のPER(株価収益率)の平均は約15.5倍である。直近の11月12日は約14.4倍だ。

つまり、アベノミクス・スガノミクス時代の平均PERを1.1ポイントほど下回っている。これが市場の現在の新政権への評価だ。

ならば「アベ・スガ時代」と同程度の評価が出れば、PER15.5倍まで上がってもおかしくない。日経平均の予想EPS(1株当たり利益)である約2054円(11月12日)で計算すると、日経平均は3万1800円台(=2054×15.5)になっても十分可能ということになる。

新政権への評価が上になればさらなる上値もあり、期待外れならば株価は失速する。これが極めて明快な、今の兜町筋の見方だ。

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