ECBの追加緩和観測で一段のユーロ安へ 4日の欧州中央銀行理事会に注目

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さらに、ドラギ総裁の講演では、インフレに関して事前原稿にはなく、実際の講演で追加された部分が注目された。

具体的には、2012年半ば以降の通貨高が食品・エネルギー価格を通じて物価に下落圧力を加えたとし、ロシア・ウクライナの地政学的リスクや周辺国の価格調整・高失業がリスクだと言及した上で、期待インフレの低下に「8月中に金融市場はインフレ期待が全ての期間で大幅に下落したことを示唆している。

われわれが中期インフレをはかる際に通常用いる指標である5年/5年スワップ・レートは15bp低下し、2パーセントをやや下回っている。しかし、さらに中短期ゾーンでは調整がより大幅なものとなっている」という一節が追加された。

ECBの追加緩和の可能性は?

こうしたなか、今後のECBの追加緩和の可能性を考えるうえでは、ユーロ圏の総需要(景気回復)、インフレ率、および中期インフレ期待の動向が焦点となろう。上述の通り、ユーロ圏実質GDPは4~6月期に前期比横ばいと5四半期ぶりに成長が止まる形となった。

ただ、ユーロ圏総合PMIはなお景気回復の継続を示唆しており、バークレイズも7~9月期と10~12月期の成長率をともに同+0.3%と予想している。しかし、足元でドイツ経済の減速感が強まっていることが懸念される。Ifo景況感指数の期待DIは8月が-0.1と、昨年5月以降で初めてマイナスとなっており、ドイツの循環的な景気拡大が一巡した可能性を示唆している。

次に物価動向については、ユーロ圏HICPが8月に速報ベースで前年比+0.3%まで減速した。ただ、コアHICPが+0.9%と7月の+0.8%から予想外に加速したことから、インフレ率には底入れの兆候が出ているとも判断できよう。実際、バークレイズは9月HICPが+0.3%にとどまった後、10月以降は緩やかに回復すると見ている。

しかし、物価の下振れリスクは排除できず、市場でデフレ・リスクが意識されるような状況となった場合、ECBに対する追加緩和圧力が強まろう。

6月に一連の金融緩和策を発表したばかりであるECBが取りうる追加緩和策とは何だろうか。ECBの行動を理解するうえでは、ドラギ総裁が4月24日にアムステルダムで行った講演が重要だ。

この講演では、(1)金融スタンスの正当化できない引き締まりに対しては「伝統的な措置」、(2)銀行チャネルを通じた伝達の阻害に対しては「的を絞ったLTROまたはABS買取プログラム」、(3)インフレの中期的な見通しの悪化に対しては「より広範な資産買取プログラム」を講じると説明した。

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