産業リサーチ(学習塾) 淘汰再編目立たないが、今後は上場企業同士の統合も

学習塾の市場規模は1994年の9000億円から、1999年には1兆8000億円に倍増(総務省サービス業基本調査)。現在は2兆円を超える規模とみられている。少子化の中、なぜ市場は拡大しているのか。それは受験の低年齢化と、子供1人当たりにかける金額が増えたためだ。
 かつての受験ビジネスは、浪人生相手が中心だった。そこでは駿台予備学校や代々木ゼミナール、河合塾など、マンモス浪人予備校が隆盛を誇った。しかし少子化の進展で1990年代前半に大学受験生はピークアウト。それまでの私大乱立の影響もあり、最近は定員割れの大学も出てきた。大学は浪人して行くところではなくなり(浪人市場の縮小)、親も子も学校も、現役合格を重視するようになる。
 ただ少子化でも難関大学は相変わらずの狭き門。勢い、受験準備を早くから始める親子が増える。特に大都市圏では、いい大学へ行くにはいい高校、いい高校にはいい中学、いい中学にはいい小学校……という受験の低年齢化が進み、市場は低学年に向けて拡大した。幼・小・中・高校生をターゲットとする現役学習塾の時代である。
 塾側にも変化が起きた。拡大する市場を狙って企業が経営する塾が増加。一方、地方で特に多かった個人経営の塾は、生徒を奪われて廃業というケースが増えた。現在、株式を上場している学習塾は全国で21社あるが、未上場を含めて有力学習塾への生徒集中が進んでいる。
 昨年4月の学習指導要領改訂では、公立小中学校のいわゆる”ゆとり教育”が学力不安を呼び、一時これが学習塾に追い風となった。しかし、すぐに落とし穴が待っていた。指導要領の改訂で内申点(通信簿)が「相対評価」から「絶対評価」に変更。それまでは「5」は成績上位の7%、「4」は次位の24%などと決まっていたが、絶対評価では生徒が個々の目標に達していれば「5」や「4」がもらえる。「成績のインフレ」が始まり、親も子も成績が上がったと安心したのか、「昨年夏以降、生徒募集に陰りが出た」(上場塾社長)。
 ところが最近、また風向きが変わっている。受験年齢が近づくと、校外の模擬試験を受ける子供が多いが、「学校の成績はいいのに、模試の偏差値は50以下。これにビックリする親子が増えている」(塾経営者)。慌ててまた子供の塾通いを再開する親もいるという。
 ただ、塾の乱立や親の所得減少が響き始め、生き残り競争は厳しさを増していることに変わりはない。個別指導に生徒が流れたと見るや、集団授業の塾がこぞって個別指導に参入。関西や東海地盤の塾が市場の大きい首都圏に攻め込み、それを迎撃する側は塾の新設展開を急ぐなど、陣取り合戦も熾烈だ。
 東京個別指導学院、秀英予備校、進学会、未上場のさなる(佐鳴予備校)、日能研、ジーニアス研究所(SAPIX)などが成長株と目されるが、競争激化の中で明確な「勝ち組」とは言いきれない。淘汰・再編の目立たない業界だが、今後は上場企業同士の統合なども出てくるだろう。

(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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