(第50回)【2011年度新卒採用戦線総括】社員との接触によって好感し、応募する学生

✎ 1〜 ✎ 48 ✎ 49 ✎ 50 ✎ 最新
拡大
縮小

●研究室訪問を受けた学生の8割は応募に前向きだが、訪問企業は少ない

【研究室訪問による応募時形成】
 理系の志望動機は文系とかなり異なっており、上位に来るのが「研究設備」などの項目だが、それでも「会って説明を聞いた」企業に対する志望態度は一変する。上図の【研究室訪問による応募時形成】は、研究室訪問を受けた企業に正式に応募(自由応募)しようと思うかを聞いたものであるが、なんと4割が「応募すると思う」と答え、「検討する」を合わせると8割に達する。「応募しない」と態度が明確な学生は8%と1割に満たない。「検討する」と答えた学生も、その後にフォローすれば応募に至る確率は高いから、大多数の理系学生に対し、研究室訪問は絶大な効果がある、ということになる。
【研究室訪問における企業とのコミュニケーション】
 研究室訪問に関してもう1つのデータがある。【研究室訪問における企業とのコミュニケーション】だ。研究室訪問を受けた学生の8割は、訪問企業への応募に前向きだが、実際には6割以上の学生は研究室訪問を受けていない。つまり多くの理系学生は白紙の状態で就活している。もし研究室訪問を受けていれば、その企業に応募した学生は多いはずだ。

 知名度の低い素材や生産財メーカー、中堅・中小メーカーの人事は「買い手市場と言われるけれど、知名度が低い当社への応募が少なく、思うような採用ができない」と嘆くが、自分たちが大学の研究室に出向いて自社の技術や製品を説明する努力をしているかというと、そうではない。Webまかせで自らが出向かない。良い学生を採用できないのではなく、採用するための手続きを怠っていると言ってもいいだろう。

 20年以上前は、企業人事は研究室とのパイプをいかに維持、拡大するかに努力していた。夏から秋に数週間かけて全国の研究室への挨拶をして回る習慣があった。そういうパイプは1990年代のバブル崩壊後に細り、やがて蒸発した。
 また大学教授も「推薦を出しても企業が採用しないことがあるので、もう推薦は出さない」「学生が自由応募したがる」と言う。しかし研究室訪問の習慣を失ったメーカー人事が多い現在こそ、研究室訪問の効果は高い。
 ねらい目は、新幹線が通っていない地域の大学だ。何事にもコストパフォーマンスが重視されるので、交通の便が悪い大学を訪問する企業が少ないからだ。

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT