トップ交代に新料金、ソフトバンク戦略転換 米国での単独路線に勝ち目はあるか

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8月8日、決算会見に臨んだソフトバンクの孫社長

これで世界制覇の野望はついえるのか。昨年、グループ傘下に収めた米携帯電話3位スプリントを通じ、4位のTモバイルUS(ドイツテレコム子会社)の買収を目指してきたソフトバンク。孫正義社長は8月8日の決算会見で「同じ規模の者が三つどもえで戦うほうが激しい競争になるという考えは変わらない。だが、当面はスプリント自身で伸ばしていくことが課題になる」と語り、買収の断念を事実上認めた。

戦略転換の背景にあるのが、米司法省やFCC(連邦通信委員会)といった規制当局の存在だ。実際、FCCのトム・ウィラー委員長は8月4日、買収断念がニュースで報じられると、「4社による(モバイル市場の)競争が、米国の消費者にとって望ましい」と、“歓迎”とも取れる公式声明を発表した。

厚かった当局の”壁”

要は米国の携帯市場は大手4社体制で競争環境が確保されており、スプリントがTモバイルをのみ込み、市場がベライゾン・ワイヤレス、AT&Tとの三つどもえになるのは望ましくないと思っているわけだ。

孫社長はこれまで、ワシントン商工会議所や業界団体のイベントで、米国の通信環境が先進国の中でも劣っていることや、競争の必要性を熱弁。FCCの元法律顧問を米国子会社の経営陣に招聘し、Tモバイルの元幹部も本社に呼び込み、着々と準備を進めてきた。が、当局の壁は厚いと判断したようだ。

スプリントの買収交渉時、ソフトバンクは「Bプラン」としてTモバイルの買収も同時に進めていた。孫社長は当初から2社を買収し、ベライゾンとAT&Tの2強に対抗する腹づもりだった。今回、買収を見合わせることで、戦略見直しを迫られるスプリントだが、その動きは早い。

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