英『ダウントン・アビー』世界中で人気の謎 英国貴族と使用人の格差は、現代の縮図か

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一方、貴族に仕える多くの使用人たちの世界が並行して描かれる。こちらも、伯爵付き従者ベイツ、執事カーソン、伯爵夫人付き侍女オブライエン、家政婦長ヒューズら給与も高く、主人たちにより近い立場の上級使用人と、下僕やハウスメイド、台所手伝いの厨房メイドなどの下級使用人といった具合に、明確に格付けがなされている。使用人たちには使用人たちの間で、嫉妬やいじめ、恋愛があると同時に、2つの世界が密接にかかわり合いながら、複雑な人間模様が展開する。

使用人たちの人生もいろいろ

愛憎渦巻く“ハイソなメロドラマ”

『ダウントン・アビー』は、しばしば“ハイソなメロドラマ”と形容されるが、これはある意味で非常に的を射た表現だ。美しい衣装に豪華な調度品などの美術、そして荘厳な屋敷は、英国バークシャー州に実在するエリザベス朝の貴族の館“ハイクレア城”がモデルとなっており、実際に撮影(の一部)も行われている。失われた時代のロマンをたっぷりと味わわせてくれるシチュエーションではあるが、そこに渦巻く愛憎のドラマは、こってりと濃厚だ。

とりわけ、女性は「結婚が人生のすべて」といった価値観で展開するパートは、かなりあけすけに感じられる。しかし、カネか家柄か、名誉か実を取るかといった、この時代の結婚のあり方は、逆にそうした体面にとらわれない真実の愛を際立たせ、自由恋愛をよりロマンチックなものとして見せてくれる効果がある。

年齢や身分、階級が違う、それぞれの登場人物たちの波乱に満ちた恋愛模様は、エンタメにおいては永遠の人気ジャンルとも言うべき大河ロマン、昼メロ、アメリカで言うところのソープオペラである。そうした要素の強いドラマを、いかにもイギリスものらしく“格調高く”描いているのが本作の醍醐味なのだ。

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