意外と誰も知らない「END」のもう1つの深い意味 西欧と日本「時間に対する考え方」の違い

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佐藤: でも、この世界の終わりというのは、一方では完成でもある。人間がすべて裁かれ、正しい者とそうでない者があるべきところに落ち着く。つまり神の目的が達成される時だからです。この時間と世界観が表れている言葉として、ENDがあるわけです。

すると、最後の審判の前と後では、明らかに世界が変わるよね。時間は最後の審判で一度断絶し、新しい時間が始まる。西洋の時間概念は、このように一直線で断絶がある。

ちなみに、この時間が断絶し、前後で世界が変わる時間のことを「カイロス」と呼びます。それに対して、質的に同じ時間のことを「クロノス」と呼び、2つの時間を区別して考えます。だから、西暦もカイロスだね。紀元1年って何があった年?

生徒イエス・キリストが生まれた年です。

佐藤: そうだよね。正確に言うと、一昔前までイエスが誕生したと信じられていた年です。現在の歴史研究では、イエスが紀元前3年頃に生まれたというのが主流説です。救世主であるイエスが誕生したことで、世界は大きく変わった。だから、この年も前後で質が変わる時間、カイロスなの。そして最後の審判でも世界が変わるから、これもカイロス。

これ以外にも、カイロスと思われる時間の断絶はあると考えられます。たとえば最近で言うならば、アメリカで起きた同時多発テロ。この前後で世界が大きく変わりました。

私たち日本で言うならば、明治維新とか1945年の太平洋戦争での敗戦。それに3・11と呼ばれる東日本大震災なんかそうだね。時間が一直線に流れていること。そのなかで質が変わること。これが西欧的な時間概念だと考えてください。

一度リセットしてまた始まる

佐藤: それに対して、日本など仏教的な文化を持つ場所での時間はどんな時間か? 皆さんは大晦日ってどうやって過ごしている? 

生徒: 家族と一緒にテレビを見たりして……。

佐藤: 大体の家庭はそうだね。一緒に食事しながらテレビを見たりして、年を越すんじゃないかな? で、深夜になると、テレビの画面がパッと切り替って大きな鐘が映り、除夜の鐘が鳴る。「ゆく年くる年」だね。ちなみに除夜の鐘がいくつなるか知っているよね。

生徒: 108です。

佐藤: そう。なんで108なの?

生徒: 人間の罪の数ですか?

佐藤: 罪とはちょっと違うな。人間の欲望、煩悩の数。それが108あって、鐘をその数鳴らすごとに1つずつ消し去るという意味があります。夜の12時までに54回鳴らさないといけない。年が明けてまた54回打つと決まっています。

そうやってまた新しい1年が始まるわけです。12月31日の夜にお祭り騒ぎがあって、その儀式が終わって1年をリセットする感じ。そして元旦を粛々と迎える。これを繰り返していくでしょう?

日本人の多くが抱いている時間感覚って、この大みそかと正月のように、リセットしてまた新たに繰り返すという感じなの。これってぐるぐる回っている円環のようなイメージだよね。この時間感覚は仏教から来ている。仏教では人間は死んだらどうなる?

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